欧州委が難民対策の新制度案発表、加盟国で受け入れ分担へ

欧州委員会は23日、中東やアフリカから欧州に流入する難民の受け入れに関する新たな制度案を発表した。難民が最初に到着した国が審査や保護の責任を負う「ダブリン規則」を見直し、全ての加盟国が受け入れや本国送還のための負担を分担するシステムに移行する。欧州委は2023年までに新制度を法制化したい考えだが、難民の受け入れに否定的な東欧諸国の反発も予想される。

現行のダブリン規則は、難民が最初に到着した国に難民申請の審査義務や審査が通った場合の保護義務を課している。難民の多くは中東やアフリカから地中海やトルコ経由で欧州を目指すため、大半が地中海沿岸国にたどり着く。欧州委はギリシャやイタリアなどに過度な負担がかかる現状を改善するため、負担の分担を加盟国に義務付ける制度改革を提案した。

改革案によると、欧州委が各加盟国に一定の割合で難民受け入れ数を割り当てる。加盟国は割り当てられた難民を受け入れるか、難民申請が認められたかった場合は本国に送還するための費用を負担しなければならない。自国で受け入れができない場合はギリシャやイタリアなどへの支援や、他国で難民認定されなかった人々の本国送還を担うことで責任を果たすことができる。

難民を受け入れた国には欧州連合(EU)予算から補助金が支給され、ロイター通信は大人1人につき1万ユーロ(約120万円)と報じている。

このほか難民申請の審査を迅速化し、難民認定されなかった人々の本国送還を徹底する。国境警備も強化し、欧州に流入する難民・移民の数が急増した場合は責任分担を厳格化する。

EUでは120万人以上の難民・移民が欧州に押し寄せた15年から加盟国による受け入れの分担を検討してきたが、東欧諸国などの強い反対で見送られた経緯がある。ギリシャなど地中海沿岸国はダブリン規則によって強いられた負担増に不満を募らせており、難民政策を巡ってEU内で不協和音が高まっていた。欧州委のフォンデアライエン委員長は声明で、「現行システムはもはや機能していない」と指摘。「責任と連帯の公平なバランス」を取る必要があると強調し、全ての加盟国が連携して難民問題に対処しなければならないと訴えた。

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