ロシア、外国の通信衛星の利用禁止を検討

ロシア連邦議会が外国のプロバイダーを経由したインターネットの利用に罰金を科す法案を検討している。同規制の導入は国家安全保障を理由としたものだが、国民がスペースXやワンウェブといった外国の事業者を利用することで、政府によるネットワーク監視を逃れることへの懸念がある模様だ。

低軌道の衛星ネットワークを利用したインターネット通信は電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク氏の宇宙開発事業会社スペースXや、英政府とインド企業が出資するワンウェブ社が導入を進めており、これまでに複数の衛星の打ち上げが実施されている。計画が進めばロシアのユーザーがスペースXのインターネット通信プロジェクト「スターリンク」やワンウェブ社の衛星インターネット通信を利用できるようになり、ロシアの通信会社を迂回して政府の監視を逃れることが可能になる。また欧州連合(EU)も自前の衛星回線を使ったインターネット通信の導入を計画している。

米誌ポピュラーメカニクス(ロシア語版)によると、現在検討されている法案の罰金額は個人が1万~3万ルーブル、企業は50万~100万ルーブル。低軌道衛星はエンドユーザーの近くに地上局を必要とするため、罰則の適用地域は当面、地上局に近い特定の国境地帯に限定される。

国営宇宙開発企業ロスコスモスのロゴジン総裁はスペースXのスターリンク計画を大きなライバルとみなしている。同総裁はスペースXが政府契約を通して補助金を受け取っているとし、米航空宇宙局(NASA)と米国防総省を批判した。スペースXはロケットの打ち上げを他の事業者よりも割安な価格で提供している。

法案は衛星インターネットの外国の事業者すべてを対象としているが、対象企業にはロスコスモスのサービスの利用企業も含まれている。ワンウェブは衛星打ち上げにロシアのソユーズロケットを利用しており、直近では昨年12月に打ち上げに成功した。ロスコスモスは今年末までにワンウェブの低軌道衛星500個を打ち上げる予定だ。

一方ロシア政府も「スフェーラ」と呼ばれる衛星インターネット通信の導入を計画している。今後数年のうちに実現を目指しているとされるが予算はまだ承認されていない。ボリソフ副首相によると、政府は2022年までに100億ルーブル(1億1,100万ユーロ)を支出することを決定しているものの、総額では160億ユーロ以上が必要になる見込みだ。現状では年間の宇宙関連予算の総額は20億ユーロにとどまっている。(1RUB=1.41JPY)

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