ルーマニア、インフラ入札から中国企業を排除

ルーマニア政府が中国との距離を広めている。昨年、原発計画で中国広核集団(CGN)との提携を破棄したのに続き、インフラ入札から中国企業を排除する方向だ。その背景には、中国の高圧的な外交姿勢や、過去の契約不履行による中国企業の信用失墜などがある。

政府は先月、ルーマニア又は欧州連合(EU)と貿易協定を結んでいない国の企業をインフラ入札から排除する方針を固めた。高速道路・鉄道整備などの大規模プロジェクトが対象で、迅速な整備を実現するためと説明している。近く、緊急政令の形で規定を発効させる運びだ。

ダン・バルナ副首相は、「中国企業を標的にしているわけではない」と断ったうえで、「中国および他の非EU加盟国の企業が低価格で工事を落札した後に、必要な資格や資金の欠如が判明」するような事例が複数発生し、これらの国の企業に対する「ルーマニア国民の信頼が失われた」と指摘。政府として、インフラ計画の確実な実行を求める国民の強い要望を無視できないと説明する。

非EU企業の排除が国内企業の優遇につながるという声も、もちろんある。ただ、中国企業が入札結果を不服として裁判を起こし、プロジェクトが年単位で遅れる現実があり、「強硬策もやむを得ない」という意見に賛成する人が増える原因となった。

ルーマニアはバルト3国などと並び、今年の東欧17カ国・中国首脳会議(17プラス1会議)への元首出席を見送った。消息筋によると、中国政府は事前にクラウス・ヨハニス大統領が欠席すれば「両国関係が悪化する」と圧力をかけてきたという。次世代(5G)通信網構築から華為技術(ファーウェイ)を排除した際にも同じような脅かしがあったもようだ。

ルーマニアはこのところ、外交の基本を「EU、北大西洋条約機構(NATO)及び、米国との戦略提携」に置いていることを改めて強調している。一方で、中国との関係は「実利を基盤とした相互協力」と定義する。ソ連やロシアとの関係で経験してきた大国との外交の難しさを踏まえ、欧米同盟の一員として自らを規定することで中国をけん制する狙いとみられる。

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