ポーランド新興企業がESAと提携、グラフェンベースのセンサー開発で

欧州宇宙機関(ESA)の支援を受けて、ポーランドのアドバンスド・グラフェン・プロダクツ(AGP)が宇宙産業向けにグラフェンベースの温度・磁気センサーを開発した。1つのセンサーで温度と磁気に対応できるため、小型化が重要な宇宙分野にとって朗報となる。

ESA材料・加工部門のウーゴ・ラフォン(Ugo Lafont)氏によると、新センサーは、グラフェン固有の電気抵抗が温度に応じて変化することを利用して温度を測る。室温から12ケルビン(摂氏マイナス261.15度)の低温まで計れる。

また、磁界測定では、ホール効果(物質中に流れる電流に対し垂直方向に磁界を加えると、電流と磁界に垂直な方向に電界が生じる現象)を応用している。

AGPは、高精度を保証するために必要な、約1平方センチ大という大型のグラフェンシートの製造を引き受けた。グラフェン薄片を液体銅の表面で膜状に成形する同社の「高強度冶金グラフェン(High Strength Metallurgical Graphene)」は、固体表面を用いる従来の化学気相成長法(CVD)よりも精度が高いという。

ポーランド技術開発センター(PORT)がAGPのグラフェンシートをセンサーのコネクタに合わせてナノ単位の精度で調整し、密封する作業を引き受けた。プロトタイプをAGPとウッジ工科大学が試験し、測定精度を100分の1度まで高めた。

ウーゴ氏は、新センサーが宇宙分野だけでなく、極低温機器や電力市場、食品製造業など多様な分野で活躍するとみる。また、今後の展望としては小型化・使いやすさの向上に加え、◇これまで検出できなかったレベルの汚染物質や微生物を探知できるセンサーの開発◇グラフェンをバッテリーなど蓄電手段に応用し、性能を向上させる◇様々な材料を加えてグラフェンの共同・電気特性を改善する――などを挙げた。

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