ハンガリー国境に近いクロアチアの町レグラドが、大胆な町おこし策を実施している。自治体所有の住居あるいは家の敷地を1クナ(0.13ユーロ)で売り出したのだ。不動産を事実上「プレゼントする」ことで子持ち世帯に住みついてもらおうという戦略で、資格は40歳未満かつ、15年以上住む意思があることだけだ。
レグラドのイヴァン・サボリッチ町長によると、同町では亡くなった住人の残した家屋・土地を相続する人がいないケースが増えている。このような場合、国内法によって所有権が自治体に移る。誰かが引っ越してくれば良いのだが、国境のレグラドへ来ようという人はなかなかいない。
そこで、イタリアでの前例を参考にしながら1クナで不動産を販売することにした。結果は上々で、初年度の今年は30人が新たに越してきた。民間取引でレグラドに家あるいは土地を買った人には3万5,000クナの補助金を出す決まりも設け、さらに100人を「獲得」した。レグラドで育った若者が親から独立するに当たって制度を利用した例もあるという。
過疎地というと「仕事がない」というイメージがあるが、レグラドのある地域は人手不足で、民間あっせん業者を通じてインドやネパールから従業員を迎えている会社さえあるという。その背景には、クロアチアの欧州連合(EU)加盟以降、西欧に職を求めてたくさんの人が移住したことがある。「クロアチアでは希望する職に就けない」と国外へ引っ越す人がある一方、経済の柱である観光業界や、建設業界で働く人が減り、求人はあるのに働き先がない、働く人はいるのに求職に応募がないというミスマッチが続いている。専門家は国内に魅力ある雇用を増やさなければ問題は解決できないとみている。
サボリッチ町長はそれでも楽観的だ。クロアチアはすでにEUに加盟しており、域内をビザなし移動できるシェンゲン協定へも近く加盟できる見通しだからだ。
レグラドが国境の町となったのは、オーストリア・ハンガリー二重帝国が第一次世界大戦に敗れて崩壊した後のこと。それ以前はムーラ川がドナウ川支流のドラーヴァ川へ合流する交通の要衝として栄えていた。ハンガリー及び他の加盟国との交流が増えればレグラドの魅力も増し、住民が定着すると考えている。