●ハイエンド製品の同社買収により自転車事業を強化する
●同社のトレッキングモデルは航続距離100キロメートル
独高級車メーカーのポルシェは19日、クロアチアの電動(EV)ハイパーカーメーカー、リマックの電動アシスト自転車事業グレイプ・バイクス(Greyp Bikes)を買収すると発表した。自転車事業を強化する狙い。取引成立には競争当局の承認が必要となる。手続きは年内に完了する見通しだ。
ポルシェは2018年、リマックへの出資と同時にグレイプの株式約10%を取得した。今回の追加投資は株主間協定で定められた先買い権を行使するもので、出資比率は「過半数」に上昇するが、具体的な数値や投資額は明らかにされていない。リマック・グループのマテ・リマック最高経営責任者(CEO)など創業者は保有するグレイプ株を継続保持する。
グレイプは2013年の創業。リマックと同様、ハイエンド製品に焦点を定める。組込み型SIM(eSIM)を装備し、スマホで速度計・ナビゲーションはもちろん、遠隔操作による施錠・開錠、充電レベルの確認、自転車の位置確認など、さまざまな機能を利用することができる。盗難された場合には、やはり遠隔操作でスイッチを切ることも可能だ。前方と後方にカメラを設置し、走りを撮影・記録できる。
今年半ばには、取り外し可能な700ワットのバッテリーを装備した、航続距離100キロメートルのトレッキングモデルを発売した。
グレイプは今回の取引について、「マイクロ・モビリティに着目した我々のビジョンが正しかったことを示すもの」とコメント。ポルシェの傘下に入ることで、「研究開発(R&D)がさらに加速する」と期待感を示した。
ポルシェは独自転車メーカーのロートヴィルトと提携して高級電動アシスト自転車2モデルを販売しているが、需要の大きさを反映して現在のところ、ほぼ完売状態という。グレイプ子会社化後も、ロートヴィルトとの提携は継続する方針で、両モデルのマイナーチェンジも予定する。
ポルシェは今後もデジタル・電動化を推進する計画だ。今後5年で総額150億ユーロを技術開発に投資する。このうち65億ユーロは自動車のハイブリッド化・電動化に、55億ユーロはデジタル化、30億ユーロはEモビリティ関連設備投資に振り向ける。
デジタル化ではスマートモビリティ、車載IT、事業プロセスの刷新などに取り組む。Eモビリティ関連では、充電インフラや電動車工場などを整備する。