2010/6/14

産業・貿易

銀行取引データめぐる交渉が前進、米側が個人情報保護強化策を提示

この記事の要約

米国がテロ対策の一環としてEUに金融取引情報の提供を求めている問題で、欧州委のマルムストロム委員(内務担当)は10日、新たな協定の締結に向けた交渉に大きな進展があったことを明らかにした。米国は欧州議会が個人情報保護に関し […]

米国がテロ対策の一環としてEUに金融取引情報の提供を求めている問題で、欧州委のマルムストロム委員(内務担当)は10日、新たな協定の締結に向けた交渉に大きな進展があったことを明らかにした。米国は欧州議会が個人情報保護に関して強い懸念を表明している点を踏まえ、従来に比べてはるかに厳格な個人データの取り扱いルールを提示してきたという。EU加盟国と米国は昨年11月の時点で暫定的な協定に合意しており、新たな協定案に対する欧州議会の反応が注目される。

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マルムストロム委員は定例の会見で「新たな協定案では個人情報保護対策が著しく強化されている」と説明。具体的には◇EU側から提供されたデータが不正に使用された場合、米国の司法制度に基づいて法的救済を受けることができる◇米国から送金データなどの提供を求められた場合、欧州刑事警察機構(ユーロポール)はテロ防止やテロ組織の資金源を突き止めるうえで必要な措置かどうかを事前に検証する権限を持つ◇米当局が第3国にデータを転送する際はさらに厳格な個人情報保護ルールを適用しなければならない◇米国の執行機関が根拠なく無作為に金融取引情報をチェックすることを禁止する――などが盛り込まれていることを明らかにした。

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米国は2001年の同時多発テロ以降、テロ資金根絶に向けた取り組みを強化しており、ベルギーに本部を置く国際銀行間通信協会(SWIFT)は米財務省の求めに応じて顧客の氏名、口座番号、受取人の氏名、送金の額や目的といった情報を提供してきた。しかし、EU内ではSWIFTからの情報提供が明るみに出た06年以来、加盟国の同意を得ずにEUと比べてデータ保護対策が甘いとされる米国に個人情報が移転されることへの反発が強まり、EUと米国は改めてデータ利用の条件などについて協議する必要に迫られた。

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EU加盟国と米国は昨年11月、SWIFTが米側に提供するデータはテロ活動への関与が疑われる人物に関する情報に限定するなどの条件をつけたうえで、有効期限を9カ月とする暫定的な協定の内容で合意した。しかし、欧州議会は今年2月、「個人情報保護の原則に反する」として暫定合意を否決。このため米国はSWIFTのデータにアクセスできない状態が続いており、テロ対策に深刻な影響が出るとしてEUの対応を強く非難している。

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