2010/8/30

環境・通信・その他

EUが養殖クロマグロの自然産卵に成功、商業化に期待

この記事の要約

欧州委員会は25日、大西洋クロマグロの養殖を研究しているEUの共同チームが、ホルモン投与を行わない自然な方法でクロマグロに産卵させ、卵を採取することに成功したと発表した。生け簀内で養殖しているクロマグロが、1日に約1,0 […]

欧州委員会は25日、大西洋クロマグロの養殖を研究しているEUの共同チームが、ホルモン投与を行わない自然な方法でクロマグロに産卵させ、卵を採取することに成功したと発表した。生け簀内で養殖しているクロマグロが、1日に約1,000万個の卵を産んだという。現在は卵のふ化と仔魚の育成に取り組んでいる。今後さらに研究が進んで養殖の商業化に成功すれば、供給量が増加し、クロマグロ資源の枯渇に対する懸念が緩和されるものと見込まれる。また同時に、養殖事業による雇用の拡大や、経済成長にもつながると期待されている。

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EUから298万ユーロの資金援助を受け、この研究を手がけているSELFDOTT(クロマグロの家畜化と持続可能な養殖を目指す研究チーム)は昨年、養殖するクロマグロにホルモン投与を行い、産卵させることに成功していた。ただ、クロマグロの完全養殖(人工ふ化から育てた成魚が産卵し、卵を人工ふ化させ、仔魚から稚魚、幼魚、成魚に育て、またその魚が卵を産むというサイクルの確立)は非常に難しく、世界でも唯一、2002年に日本の近畿大学水産研究所が成功させた例があるのみとなっている。SELFDOTTを取りまとめるスペイン海洋学研究所(IEO)の研究者は今回の結果について、3年間にわたる研究の成果であり、クロマグロが養殖環境に適応する能力を保有していることが示されたと指摘した。SELFDOTTには、スペイン、フランス、ドイツ、イタリア、ギリシャ、イスラエル、マルタから13の政府機関および研究機関、業界団体が参加している。

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なお、クロマグロ漁をめぐる外交上の緊張が高まっている現状についてSELFDOTTは、緊張緩和の重要性を訴えるとともに、大量養殖に関するガイドラインの策定を求めている。EUは現在、地中海および大西洋東部でのクロマグロの捕獲を禁止している。

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