2010/9/20

産業・貿易

欧州委が空売りなどの新規制発表、緊急時に取引停止も

この記事の要約

欧州委員会は15日、株式や国債の空売りとデリバティブ(金融派生商品)取引に関する新規制案を発表した。金融危機再発防止策の一環で、透明性の確保、リスク管理徹底のため取引の報告義務を強化する。空売りについては、緊急時には加盟 […]

欧州委員会は15日、株式や国債の空売りとデリバティブ(金融派生商品)取引に関する新規制案を発表した。金融危機再発防止策の一環で、透明性の確保、リスク管理徹底のため取引の報告義務を強化する。空売りについては、緊急時には加盟国の当局に取引を一時停止する権限を与える。

\

空売り規制は国家や企業の信用リスクを売買するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)も対象。投資家に対して一定以上の売り持ち(ショートポジション)を当局や市場に報告することを義務付ける。株式の場合、ショートポジションが対象銘柄の発行済み株式総数の0.2%を超えれば当局に報告しなければならない。0.5%を超えれば市場への報告も求められる。これにより市場での取引動向を当局が把握し、リスクを早めに察知できるようにする。

\

また、異常な値動きを示すなど緊急事態が生じた際は、各国当局が来年1月に発足予定の欧州証券監督機構(ESMA)に原則24時間前に通告した上で、空売りおよびCDS取引を一時的に停止する権限を与えられる。停止期間は最長3カ月だが、必要に応じて3カ月の延長が認められる。

\

現物手当てのない空売りに関しては、手当て可能であることの証明を義務付ける。これにより同取引は大幅に制限されることになる。

\

空売り規制をめぐっては、ドイツが5月、ギリシャに端を発したユーロ圏の信用不安は国債などの投機的な取引によって助長されているとして、国内で取引されるユーロ圏16カ国の国債やCDS、国内の一部株式の空売り禁止措置を導入。この措置はEUも寝耳に水の単独行動で、ユーロ圏内の市場に大きな動揺を与えたことから、欧州委がEU共通の規制導入に着手することになった。

\

規制強化に積極的なドイツやフランスは、厳しい規制の導入を呼びかけていたが、欧州委は「空売りは、平時は市場の流動性を高める」(バルニエ域内市場・サービス担当委員)として、空売りやCDSの全面的な禁止は見送った。

\

一方、デリバティブ規制では、証券取引所を通さない相対取引(店頭デリバティブ)について、「標準的」な店頭デリバティブの決済を中央清算機関(CCP)に一元化する。さらに、すべての店頭デリバティブ取引をCCPのデータセンターに報告させ、各国当局がデータベースにアクセスしてリスクを管理できるようにする。メーカーなど非金融機関が経営のリスクヘッジを目的に行う取引は規制の対象外とする。

\

両規制は欧州議会と加盟国の承認が必要。欧州委は2011年半ばの施行を目指す。

\