欧州委員会は25日、EUと境界を接する中東・北アフリカや旧ソ連諸国を対象とする外交政策「欧州近隣諸国政策(ENP)」の新たなアプローチを打ち出した。中東民主化革命の広がりを受け、EUから近隣諸国への経済支援のあり方について見直しを進めていたもので、イスラム過激派などの「防波堤」として独裁政権を支援してきた過去の経緯を踏まえ、今後は改革への取り組みに応じて支援規模を調整する仕組みを導入する。
\ENPは2004年のEU拡大を機にスタートした近隣政策の柱で、対象国はアルジェリア、アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、エジプト、グルジア、イスラエル、ヨルダン、レバノン、リビア、モルドバ、モロッコ、シリア、チュニジア、ウクライナ、パレスチナ自治区の16カ国・地域。EUはこれら近隣諸国の政治・経済改革を支援するため、人権侵害や汚職の防止、報道の自由や公正な選挙の確立などを条件に財政面や技術面の援助を行っている。
\欧州委の計画によると、EUが11~13年に拠出するENP予算は57億ユーロからおよそ80億ユーロに引き上げられる。また、欧州投資銀行(EIB)による地中海南部地域向け融資を10億ユーロ積み増すほか、欧州復興開発銀行(EBRD)もエジプトなど中東・北アフリカ向け融資を拡大し、13年までに年間25億ユーロの融資枠を確保することが盛り込まれている。
\EUのアシュトン外相(外務・安全保障政策上級代表)は声明で「近隣諸国の多くが民主化プロセスの真っただ中にあり、EUの近隣政策がこれまで以上に重要になっている。EUとしてこうした国々を総合的に支援し、継続的な協力関係を構築することが求められている」と強調。欧州委のフューレ委員(EU拡大・担当)は「EUは決意と熱意をもって近隣諸国の改革を継続的に支援していかなければならないが、新たなアプローチでは各国の取り組みに応じて支援の規模を調整することになる。民主主義と法の支配がどの程度確立されているかが鍵を握り、改革の進み具合が早い国はEUからより多くの支援を受けることができる」と述べた。
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