2011/7/25

競争法

合併審査の文書開示拒否は「不当」、欧州裁がEU敗訴の判決

この記事の要約

欧州司法裁判所は21日、英大手旅行会社マイトラベル(旧エアツアーズ)と同業のファースト・チョイスの合併計画を差し止めたEUの決定をめぐり、2008年に一般裁判所(旧第一審裁判所)がマイトラベルによる関連文書の開示請求を却 […]

欧州司法裁判所は21日、英大手旅行会社マイトラベル(旧エアツアーズ)と同業のファースト・チョイスの合併計画を差し止めたEUの決定をめぐり、2008年に一般裁判所(旧第一審裁判所)がマイトラベルによる関連文書の開示請求を却下した判断を無効とする判決を言い渡した。

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公文書の開示に関するEU規則(No.1 049/2011)には、EU機関の意思決定プロセスや外部からの法律上の助言に重大な影響が及ぶ場合、当該機関は公共の利益に反しない限りにおいて公文書の開示を拒否することができるとの例外規定があり、一般裁判所は競争法審査に関する文書の開示を拒んだ欧州委員会の行為は同規定に基づくもので正当と判断した。これに対し、スウェーデン政府は公文書の開示ルールをより厳格に適用すべきとの立場から、一般裁判所による決定の無効化を求めて司法裁に提訴していた。

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今回の事案は欧州委が1999年、マイトラベルとファースト・チョイスの合併を認めた場合、英国の旅行業界で寡占化が進み、競争が著しく阻害されて消費者の不利益につながるとして計画を差し止めたことに遡る。一般裁判所は02年、実際には中小の旅行会社がシェアを伸ばしており、欧州委の決定は根拠に乏しく誤った判断だったとして差し止め命令を無効とする判決を下した。同判決は司法裁が企業の合併・買収に関する欧州委の決定を無効とした初めてのケースとして大きな注目を集めた。

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欧州委は判決を受け、対応を協議するため競争総局の担当者と外部の専門家による作業部会を設置。マイトラベルは欧州委が司法裁に上訴した場合に備え、作業部会での協議内容を記録した文書の開示を請求したが、欧州委は公文書の開示に関するEU規則の例外規定を根拠に開示を拒否した。このため、マイトラベルは一般裁判所に欧州委を提訴したが、裁判所は欧州委の主張を認めて同社の請求を却下。これを受けてスウェーデンが司法裁に提訴していた。

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司法裁は判決で、欧州委は文書を開示することで意思決定プロセスに悪影響が及ぶ理由を明確に示す必要があったと指摘。また、法律上の助言に関する例外規定に関連して、欧州委は合併を阻止した99年の決定に関する検証内容を開示した場合、今後の競争法審査に制約が生じると考えて文書へのアクセスを拒否した可能性があると分析。欧州委は公文書の開示に関する例外規定を「誤用」したと結論づけ、マイトラベルの請求を却下した一般裁判所の判断を無効とした。

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