2012/1/16

産業・貿易

エアバス補助金問題で米と協議、WTO勧告の履行めぐり平行線

この記事の要約

欧州の航空機大手エアバスへの公的支援をめぐりEUと米国が対立している問題で、14日にスイスのジュネーブで双方の代表による協議が行われた。EUは先月、エアバスに対するEU加盟国の資金支援が違法な補助金にあたると結論づけた世 […]

欧州の航空機大手エアバスへの公的支援をめぐりEUと米国が対立している問題で、14日にスイスのジュネーブで双方の代表による協議が行われた。EUは先月、エアバスに対するEU加盟国の資金支援が違法な補助金にあたると結論づけた世界貿易機関(WTO)上級委員会の裁定を受け、同委の勧告に沿って是正措置を講じたとする報告書を提出したが、米政府はEUの対応が不十分として制裁発動も辞さない構えをみせている。EUの是正策をめぐる今回の協議でも事態の打開につながる具体的な進展はなかったもようで、航空機補助金をめぐるEU・米間の通商紛争は依然として解決の糸口が見えていない。

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欧州委員会は上級委勧告を受けたEUの是正措置について、米国との間で協議が行われたことを認めたものの、話し合いの具体的な内容は明らかにしていない。一方、米側は今回、EUに対し、加盟国がエアバスへの違法な補助金を打ち切ったことを裏付ける「証拠」の提示を求めたもよう。米通商代表部(USTR)のミード報道官は「EUがエアバスに対する違法な資金支援を続けており、新型旅客機に新たな補助金を投入していることは明らかだ」と指摘。米ボーイングの中型旅客機「787」(ドリームライナー)の対抗機種となるエアバスの次世代中型旅客機「A350」への政府融資は違法な補助金にあたるとの見解を改めて示し、EUに一段の対応を求めた。

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米側は引き続き話し合いによる解決策を模索する方針を示しているが、EUが適切な措置を講じない場合はWTOが指名した仲裁人に上級委の勧告が履行されているかどうかについて判断を求め、対応が不十分とされた場合は制裁発動に向けた手続きに入ることになる。米政府はすでにWTOに対し、年間70-100億ドル規模に上る報復的措置の発動許可を申請している。

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ただ、米国にとっては過去の不正な補助金を撤回するだけでなく、EUから将来にわたってエアバスへの公的支援を行わないとの確約を取り付けることが狙いで、実際に制裁発動に踏み切る可能性は低いとみられる。一方、米政府によるボーイングへの資金支援をめぐるWTOの最終的な裁定が出ていない段階でEUが米側の要求に応じるとは考えにくく、2月にも示されるWTOの判断が交渉のカギを握ることになる。

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