2012/4/16

産業・貿易

ACTAの合法性問題、欧州裁に付託=欧州委

この記事の要約

欧州委員会は4日、知的財産権の執行のための国際的な枠組みとなる「模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)」をめぐり、EU法との整合性について欧州司法裁判所に判断を求める方針を明らかにした。インターネット上の自由の制限を懸念 […]

欧州委員会は4日、知的財産権の執行のための国際的な枠組みとなる「模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)」をめぐり、EU法との整合性について欧州司法裁判所に判断を求める方針を明らかにした。インターネット上の自由の制限を懸念する市民団体などによる抗議運動が欧州全域に広がったことや、欧州議会が条約に批判的な立場を取っていることなどを踏まえた措置。欧州議会は6月の本会議でACTAの批准承認について採決を行う予定だが、欧州委は欧州裁が判断を下すまで採決を見送るよう求めている。

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ACTAは模倣品や海賊版の増加に歯止めをかけるため、日本と米国が2006年に提唱した構想で、昨年10月に日本、米国、カナダ、韓国、シンガポール、豪州、ニュージーランド、モロッコの8カ国が署名。今年1月にはEUおよびドイツ、オランダ、エストニア、キプロス、スロバキアを除く域内22カ国が条約に署名しており、欧州議会と各国議会でそれぞれ批准手続きが行われることになっている。しかし、抗議運動の高まりを背景に、一部の加盟国は批准手続きを凍結するなど先行きが不透明になっている。

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欧州委はACTAを支持する立場から、知的財産権の執行基準を国際的に調和させるのが条約の狙いで、既存のEUルールに変更を求めるものではないとの説明をくり返してきたが、EU市民の間でプライバシーや言論の自由といった基本的権利が制限されることへの懸念が広がっている現状を踏まえ、ACTAの合法性について明確にする必要があると判断。2月末に欧州裁にEU法との整合性について判断を求める方針を打ち出した。しかし、欧州議会では条約に反対する意見が大勢を占め、国際貿易委員会(INTA)は3月末の会合で司法裁に付託する案を否決していた。

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欧州委のデフフト委員(通商担当)は声明で「極めて多くのEU市民がACTAについて懸念を表明している事実を踏まえ、EU最上位の独立した司法機関に条約の合法性について法的見解をまとめるための時間を与えるべきだと判断した。これはEU市民と民主主義の議論に対する重要な情報提供だ」と説明している。これに対し、欧州議会でACTA関連の議論を主導するスコットランド選出のデイビッド・マーチン議員(労働党)は、当初のスケジュール通りに採決を行う方針を示している。さらにドイツ選出のフィリップ・アルブレヒト欧州議員(緑の党)はロイター通信の取材に対し、「ACTAはただちに否決されるべき条約であり、したがって欧州裁への付託には政治的に反対だ」とコメントした。

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