2012/10/8

産業・貿易

預金・投資銀行業務を分離、EU有識者グループが提言

この記事の要約

フィンランド中央銀行のリーカネン総裁が議長を務めるEUの有識者グループは2日、銀行の預金業務と投資銀行業務を分離することを柱とする域内銀行制度の改革に関する報告書を欧州委員会に提出した。投資銀行業務のリスクから預金を保護 […]

フィンランド中央銀行のリーカネン総裁が議長を務めるEUの有識者グループは2日、銀行の預金業務と投資銀行業務を分離することを柱とする域内銀行制度の改革に関する報告書を欧州委員会に提出した。投資銀行業務のリスクから預金を保護し、銀行システムの安定性を図るのが狙い。

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リーカネン総裁は報告書の要旨をまとめた書簡の中で、「金融危機に至る過程で、非常に複雑な金融商品や不動産関連融資などの取引における過度のリスクテイク、(…)そして、短期資金調達への過剰な依存があったことが分析により明らかになった」と述べ、2008年の金融危機について、「リスクテイクと適切な資本の保護は調和せず、金融機関の間の強い結びつきがハイレベルのシステミック・リスクを作り出した」と指摘した。有識者グループのメンバーの一部からは預金業務と投資銀行業務を分離することに消極的な声もあったが、同総裁は、「ひとつの銀行グループ内で、リスクの高い特定の金融活動と預金業務を法的に分離することが必要であるというのがグループの結論だ」と強調。改革の目的は、銀行システムの「社会にとって最も重要な部分」を守り、金融市場の規律と監督を強化し、再生と破たん処理を進めることにあるとの認識を示した。

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報告書にはまた、銀行の救済あるいは破たん時に債券保有者が損失を負担するメカニズム(ベイルイン)の導入や、取引資産と不動産関連融資に関する資本要件の見直し、銀行監督の強化などの提言が盛り込まれている。

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欧州委員会のバルニエ委員(域内市場・サービス担当)は報告書について、「過去に銀行がとった過度のリスクについて明確に指摘し、銀行が顧客の利益のために働くことを確保するための貴重な提言を行なっている」と評価。報告書の提言を踏まえ、今後の対応策を検討していく意向を示した。

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