2013/6/17

産業・貿易

加盟国が対米FAT交渉開始を承認、音響映像分野は対象外に

この記事の要約

EU加盟国は14日の通商担当相理事会で、米国との自由貿易協定(FTA)の交渉開始を承認した。焦点の映画やテレビなど音響映像サービス分野の扱いをめぐって協議が難航したが、最終的にフランスの主張を受け入れ、当面は同分野を交渉 […]

EU加盟国は14日の通商担当相理事会で、米国との自由貿易協定(FTA)の交渉開始を承認した。焦点の映画やテレビなど音響映像サービス分野の扱いをめぐって協議が難航したが、最終的にフランスの主張を受け入れ、当面は同分野を交渉から除外することで合意した。EUと米国は17日から英国で開かれる主要国首脳会議(G8サミット)で交渉開始を宣言するものとみられる。双方は2014年末までの妥結を目指しており、7月にも1回目の交渉が行われる見通しだ。

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理事会は文化関連分野の扱いをめぐり、12時間以上にわたって紛糾した。フランスは自国文化を保護する観点から、映画やテレビ番組で自国作品の比率を一定以上の水準に保つことを求める「クオーター制」などの奨励策を導入している。交渉を担当する欧州委員会やEU議長国アイルランド、さらに英国などは例外のない全分野での交渉を主張していたが、音響映像分野を交渉のテーブルに載せた場合、フランスは米側から映画・テレビ産業に対する支援策の撤廃を求められる可能性がある。このため「欧州の文化的多様性が失われるおそれがある」などと主張し、同分野が除外されない限り交渉開始を支持することはできないとの姿勢を貫いた。

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交渉入りには加盟国による全会一致の承認が必要なため、最終的に英国などが譲歩し、当面は音響映像分野を交渉の対象から外すことで合意。ただし、将来的に米国から交渉対象にすることを求められた場合は改めて協議し、加盟国が承認すれば対象に加えることができるとの条件を付けた。

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EUと米国は今年2月にFTAを含む包括的な貿易・投資協定の締結交渉を開始することで合意した。EU・米間のFTAが実現すれば世界全体の国内総生産(GDP)の約半分、貿易総額の約3割を占める巨大貿易圏が創設され、国際的な貿易体制に大きな影響を及ぼすことになる。ただ、EUが音響映像サービス分野を交渉から除外する例外を設けたことで、米側も同様に除外分野を要求してくる可能性がある。このほか遺伝子組み換え(GM)作物に対する規制をはじめとする農業や食品安全などの分野でも利害対立は必至で、交渉は難航が予想される。

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