欧州委員会は近くEU加盟国に対し、米ダウ・アグロサイエンスと米デュポン傘下のパイオニア・ハイブレッド・インターナショナルが共同開発した遺伝子組み換え(GM)トウモロコシ「TC1507」の栽培認可を勧告するもようだ。複数のメディアによると、欧州司法裁判所の一般裁判所は9月、TC1507に対する認可手続きが不当に長引いているとして欧州委に改善を命じており、欧州食品安全機関(EFSA)が同品種の安全性を確認していることから、栽培認可の方針を固めたという。ロイター通信は入手した内部文書を基に、欧州委が加盟国に対し、週内にも域内での商業栽培を認可するよう勧告すると報じている。
\現時点でEUが域内での商業栽培を認めているGM作物は、米モンサントのGMトウモロコシ「MON810」1品種のみ。独BASFのジャガイモ「アムフローラ」も栽培が認められていたが、欧州では依然としてGM作物に対する反発が根強く需要が見込めないとして、同社は昨年、GM作物の販売に関して欧州市場からの撤退を表明している。
\害虫抵抗性・除草剤耐性のTC1507は北米や中南米などを中心に、「Herculex」のブランドで広く栽培されている。欧州委は2001年に同品種の認可申請を受理したが、安全性への懸念からくり返し科学的検査が行われており、審査期間が10年以上に及んでいる。今後の手続きとしては、欧州委の勧告を受けてEU閣僚理事会で認可の是非について特定多数決による採決が行われ、そこで決着がつかない場合は欧州委が判断を下すことになる。採決ではGM推進派の英国、スペイン、スウェーデンなどが認可を支持する一方、GM反対派のフランス、オーストリア、ポーランドなどは阻止に動くものとみられるが、最終的な決定権は欧州委にあるため、人体や環境へのリスクを示す新たな科学的データなどが出てこない限り、栽培が認可される公算が大きい。
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