2013/12/9

環境・通信・その他

航空会社の排出規制、英仏独が適用見送りを主張

この記事の要約

EU域内の空港を発着する航空会社を対象とする温室効果ガス排出規制をめぐり、英国、フランス、ドイツが欧州委員会に対し、国際民間航空機関(ICAO)の決定を受けて打ち出した修正案の抜本的な見直しを求めているもようだ。ロイター […]

EU域内の空港を発着する航空会社を対象とする温室効果ガス排出規制をめぐり、英国、フランス、ドイツが欧州委員会に対し、国際民間航空機関(ICAO)の決定を受けて打ち出した修正案の抜本的な見直しを求めているもようだ。ロイター通信によると、欧州空域内の飛行分についてのみEU排出量取引制度(EU-ETS)を適用するとした欧州委の提案に対し、EU加盟国の多くが非現実的との見方を示しており、英仏独はICAOが国際的な規制の枠組みを決定する2016年まで欧州空域内の飛行分についても規制の適用を見送るよう求めている。ただ、欧州議会では域外の航空会社に対する規制適用の猶予期間を短縮すべきとの意見も出ており、調整は難航が必至だ。

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EUは航空機から排出される温室効果ガスを抑制するため、08年に航空部門をEU-ETSに組み込む方針を決定。11年1月からEU域内の路線を結ぶ航空機に新規制を適用し、12年1月からは域内の空港を発着して域外と結ぶ国際線の航空機に対象を拡大した。しかし、国際間の合意がないまま域外の航空会社に域内ルールを適用するEUのアプローチに対し、米国、中国、インド、ロシアなどが国際法に抵触するとして強く反発。このため欧州委は昨年11月、域内と域外を結ぶ国際線の航空機への規制の適用を1年間、凍結する方針を打ち出し、この間にICAOの主導で国際的な規制枠組みについて合意が得られなかった場合はEU独自の規制を再開すると警告していた。

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10月初めに開かれたICAOの総会では、20年までに国際的な規制の枠組みを導入することで各国が合意。市場メカニズムに基づく規制について検討を進め、16年の次回総会で具体的な内容を決定する方針を確認した。欧州委はこれを受け、20年まで欧州空域内の飛行分に限定してEU-ETSを適用する案を提示。域内を結ぶ路線は従来通り、全行程が排出枠取引の対象となるが、域外の都市と域内を結ぶ路線に関しては、EEAの領空を飛行する分のみに規制を適用するという内容で、たとえば東京とEU内の都市を結ぶ路線の場合、アジアやロシア上空などの飛行で排出された温室効果ガスは排出量取引の対象から除外される。

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ロイターが入手した英仏独による共同文書によると、3カ国は欧州委の提案をめぐり「政治的受容性と実行可能性」について懸念を表明。16年に開かれるICAOの次期総会で国際的な規制の枠組みが決まるまでは、実際の二酸化炭素(CO2)排出量が排出枠を超えた航空会社に排出権の購入を義務付けたり、制裁金を課すべきではないと主張している。これに対し、デンマークは独自にまとめた政策文書の中で、温暖化防止に向けて航空会社にも相応の負担を課すべきだと指摘しており、規制のあり方をめぐって加盟国の間には意見の隔たりがある。

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