欧州連合(EU)がロシアによるドイツ、イタリア製の軽商用車に対す反ダンピング措置を不当として世界貿易機関(WTO)に提訴していた問題で、WTO紛争処理小委員会(パネル)は1月27日、EU側の主張を大筋で認める判断を示した。欧州委員会のマルムストロム委員(通商担当)は「ロシアによる不公正で保護主義的かつ反競争的な措置に対し、WTOが明確な裁定を下したこと歓迎する」とコメント。ロシア政府に対し、ただちに不当な課税措置を撤廃するよう求めている。
ロシアは2013年5月、ドイツとイタリアが軽商用車(2.8~3.5トン)をダンピング輸出しているとして、ドイツ製に29.6%、イタリア製に23%税の反ダンピング関税を適用した。ロシアだけでなく、同国との関税同盟に加わるベラルーシ、カザフスタンも同様の措置を発動した。EU側はこれに対し、ダンピングに根拠はなく、同措置の発動には手続き上の問題もあると反論。14年5月にロシアをWTOに提訴し、同年10月にパネルが設置された。
パネルはロシアが独・伊製の軽商用車によって自国企業が受けたと主張する損害額を試算する際、実際には国内メーカーは2社であるにもかかわらず、1社体制として市場分析を行った結果、「非現実的な数字」が算出されたと指摘。また、ロシアの軽商用車市場は13年当時、販売台数に対して生産台数が約7倍と、完全な過剰生産にあった点も考慮する必要があると指摘し、ロシアが発動した反ダンピング措置はWTOルールに違反すると結論づけた。
パネルの判断に不服がある場合、当事国は60日以内に上級委員会に申し立てることができる。