ポーランドの最大野党で右派の「法と正義(PiS)」が議員離脱で揺れている。党内リベラル派の有力議員が、ヤロスワフ・カチンスキー党首の強硬路線に愛想を尽かし、新党「ポーランドが最も重要(PjN)」を結成したのだ。11月21日の県議会選挙でも、宿敵である与党「市民プラットフォーム(PO)」に得票率で14%の差をつけられて敗れるなど、PiSの将来に影が差し始めた。
\PiSは元来、ヤロスワフ・カチンスキー党首と、春の飛行機事故で亡くなったレフ・カチンスキー前大統領の双子兄弟によるトップダウン方式で運営されてきた。ヤロスワフが強権的な采配を振るうのも昔からのことだった。それが今回、有力党員の抵抗につながった背景には、夏の大統領選でのイメージチェンジがある。
\弟レフの事故死で実施されたポーランド大統領選挙。ヤロスワフは選挙戦の陣頭指揮を党内リベラル派のKluzik-Rostkowska前労働社会相に任せた。従来の対立路線とは打って変わり、政敵には握手を求め、顔には微笑みを浮かべ、子どもをかわいがる、「やさしい小父さん」ぶりを印象付ける戦略が大成功。当初の世論調査で大差をつけられていたPOのコモロフスキ候補を激しく追撃し、決選投票で敗れはしたものの実に47%の票を得た。
\選挙後まもなく、ヤロスワフは対決路線に回帰したが、すでに選挙戦で「ヤロスワフ小父さん」をとりまく穏健派グループの形ができつつあった。元の「いやなおやじ」に戻ったヤロスワフに困ったのはこれらの穏健派議員だ。政敵を「PiSを迫害している」となじり、常識的なマナーも欠くヤロスワフを目の当たりにし、PiSの政治路線を右派から中道寄りに修正するという夢はしぼんでしまった。
\さらに、11月12日にPiS幹部は、党を公に批判したかどでKluzik-Rostkowska氏とJakubiak元スポーツ相の党籍をはく奪した。党内規律を保つための「見せしめ」だったが、これを機に下院議員や欧州議員が離党に動き出した。そして、大統領選におけるヤロスワフの選挙スローガンと同じ「ポーランドが最も重要」という名前の新政党を結成してしまった。
\ヤロスワフは「PiSの政策を批判できるのは悪意のある者だけ」とし、Kluzik-Rostkowska、Jakubiakの両氏を「宿敵の手先」となじっている。ただ、これらの批判勢力を大統領選の幹事に据えた理由については全く説明がないままで、「弟の死後に服用した“強い鎮静剤”の効果だったのでは?」という皮肉も出ている。
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