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2010/8/25

コーヒーブレイク

クレムリンは誰のもの

この記事の要約

クレムリンといえば、世界的に有名な、ロシアを代表する建物だが、あまり知られていない側面もある。例えば、城壁の色が昔は赤ではなく白だったこと、現在のクレムリンはイタリア人建築家が建てたこと――そして、メドベージェフ大統領が […]

クレムリンといえば、世界的に有名な、ロシアを代表する建物だが、あまり知られていない側面もある。例えば、城壁の色が昔は赤ではなく白だったこと、現在のクレムリンはイタリア人建築家が建てたこと――そして、メドベージェフ大統領がクレムリンに住む権利が存在しないかもしれないことだ。

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ロシアの源流となったキエフ大公国のリューリク王朝の末裔が、クレムリンの使用権を求めてモスクワ仲裁裁判所に訴えている。同裁判所は訴状を受理し、18日、ロシア文化省と連邦資産管理局に対し、1カ月以内にクレムリンに関する土地台帳の記載事項を提出するよう命じた。

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ピョートル大帝によるサンクト・ペテルブルク遷都後、モスクワは200年近く歴史の表舞台から消えた。ロシア革命、ソ連建国で首都に返り咲いた後も、第二次世界大戦、冷戦、ペレストロイカ、ソ連崩壊、と歴史が動き、クレムリンの居住権に関心を抱く輩はいなかった。このため、その所有権はあやふやなまま。政府の主張によれば、1991年にエリツィン大統領(当時)が政令を通じてクレムリンを国有化したというが、登記が済んでいないもようだ。

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リューリク朝の末裔が組織する「プリンス・ファンデーション」のヴァレーリ・クバレフ代表は、クレムリンを使用するのは「子孫としての当然の権利」と主張する。実際に訴えが認められる可能性は低いが、クバレフ氏は「必要とあればストラスブールの欧州人権裁判所に提訴する」と強気。また、ロシア、ポーランド、ウクライナ89カ所にある城砦(クレムリン)の所有権についても争う覚悟だという。

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キエフ大公を自称する同氏はクレムリン使用権だけでなく、「国家と宗教の調和」、はたまた王政復古も主張している。このため、今回の訴訟は同氏にとって、単に所有権を明確にするという以上の意味を持っているらしい。審理が始まるのは10月18日。どんな展開になるか、注目される。

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