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2010/12/15

コーヒーブレイク

医師が大量に国外脱出~チェコ

この記事の要約

チェコ政府が公務員給与のカットを計画していることで、若い医師の「国外脱出」が増加している。シフト制、夜勤を含む厳しい勤務体制に給与が全く見合っていないためだ。大きな受け入れ先は田舎を中心に医師不足が深刻化するドイツ。より […]

チェコ政府が公務員給与のカットを計画していることで、若い医師の「国外脱出」が増加している。シフト制、夜勤を含む厳しい勤務体制に給与が全く見合っていないためだ。大きな受け入れ先は田舎を中心に医師不足が深刻化するドイツ。より良い労働条件を追って、「医師大移動」とでもいう動きが起こっているようだ。

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ドイツ公共放送ARDが8日報道したところによると、チェコの若い医師の給与水準は大変低い。プラハのカレル大学で7年間勉強し、プラハ近郊の病院に勤務する外科医のエンゲルさん(28歳)の基本給はたったの600ユーロ。夜勤手当などを含めた税込み給与は1,000ユーロ弱という。エンゲルさんは「外国に行きたいと思っていたわけではないが、ほかに選択肢がない」と話す。この病院では、エンゲルさんを含め、勤務医130人の80%がすでに辞職届を提出した。

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一方、チェペノバさんは大学卒業後、チェコに近いドイツ・ザクセン州の精神病院に就職した。勤務6年目で税込み給与は4,300ユーロ。専門医試験に合格すれば5,000ユーロ弱に上がる。仕事の後には友人に会ったり、スポーツをしたり、散歩を楽しんだりと自由な時間を楽しむ。長時間労働・低賃金で恋人を作る暇も、所帯を持つ甲斐性もないチェコの勤務医に比べると格段の差だ。

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医師が英国やスイスに流出するドイツの医療機関は、求人活動の一環として欧州各地で就職メッセを開催している。先ごろプラハで初めて行われたメッセは、大量の参加者を集める盛況となった。給与水準に加え、スキルアップの機会に恵まれていることも魅力のようだ。

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チェコの医師労組は労働条件の改善を求めて、「もう御免、チェコにさよなら」というイニシアチブのもと、国内1万6,000人の勤務医のうち3,000人の組織に成功した。健康省が要求に応じなければ年末で辞職する構えだ。組合の予想通り、2,000人以上が実際に職を離れるとすると、今でも700人が不足するチェコの病院では満足な医療行為ができない状況に陥ると心配されている。

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チェコ政府はこれまでのところ、交渉に応じる姿勢を全く示していない。政府と勤務医、果たしてどちらがポーカーに勝つか、結果に注目したい。

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