ローマ教皇ベネディクト16世は14日、前任者でポーランド出身のヨハネ・パウロ2世を、「聖者(Saint)」の前段階に当たる「福者(Beato)」に列することを正式決定した。フランスの修道女のパーキンソン病治癒(ゆ)を「奇跡」と認め、今年の5月1日にサン・ピエトロ寺院で自ら列福式を執り行う。
\国民的英雄の列福の知らせに、ポーランド国内では喜びの声が次々とあがった。労組「連帯」運動の指導者として知られるワレサ元大統領は、「ヨハネ・パウロ2世なしには『連帯』はありえなかった。これからも天上から、ポーランド、欧州、そして世界の問題の解決に手を添えてくれるかもしれない」と話した。ヨハネ・パウロ2世の長年の友人として知られるクラクフのジヴィシュ大司教も、「教区、クラクフ、そしてポーランド国民すべてが大きな喜びを感じている」と述べた。
\ヨハネ・パウロ2世は1978年から2005年4月の死まで教皇を務めた。列福の是非を判定する列福調査は死後5年以上たってから行うのが普通だが、生前の人気を反映するように、亡くなった直後から早期の列福を望む声が高まり、死後3カ月という異例のスピードで調査が開始された。そして、没後6年でめでたく福者となる運びとなった。
\さて、福者になるには最低1つの奇跡を起こしたことが認められる必要がある。その「奇跡」を体験したのはフランスの修道女マリー・シモン=ピエール・ノルマンさん(49)だ。17日にフランス南部エクサンプロバンスで記者会見し、ヨハネ・パウロ2世の死去から2カ月後の2005年6月に目覚めたとき、4年間苦しんできた病気が突然治っていたと説明した。「その前の晩、声は聞こえなかったものの、これまで感じたことのない力が体の中にあるのを認めた」と話した。ノルマンさんは他の修道女とともに、ヨハネ・パウロ2世に祈りをささげたばかりだった。
\教皇庁列福・列聖省では、このケースが奇跡に当たるかどうかを調査するために医師から成る専門委員会を招集し検討させた。その結果、医学的には説明できないとの結論が出された。ただ、一般の医師の中では「真正のパーキンソン病は治らないが、パーキンソン症候群のなかには比較的症状が軽く治療可能なものも存在する」として、ノルマンさんが本当にパーキンソン病だったのかを疑う声も出ている。
\教皇庁は列福式参列者の制限を行わない方針で、史上最高の200万人の参列が見込まれている。現地では記念グッズの販売など、セレモニーに関連した売上増加に期待がかかっているようだ。また、クラクフの教会では列福直後からアンプルに入ったヨハネ・パウロ2世の血液を「聖遺物」として展示する。これは、死の直前に検査のために採血されたものということだ。なお、ヨハネ・パウロ2世の棺は参詣者の利便向上のため、サン・ピエトロ寺院内部に移すこととなっている。
\列福式が執り行われる5月1日は、ヨハネ・パウロ2世が2000年に導入した「聖なる慈しみの主日(復活祭後の最初の日曜日)」だ。1930年代にポーランドの修道女、聖ファウスティナにイエスが「慈しみの信仰」を再確認させたことを記念して定められた。ファウスティナはヨハネ・パウロ2世の教皇在位時代の1993年に福者に、2000年には聖人に列せられた。
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