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2010/9/29

コーヒーブレイク

ホロコースト否定ツアーに憤慨~ポーランド

この記事の要約

ホロコースト否定論者として知られる英国の作家、デイヴィッド・アーヴィングが再び物議をかもしている。「“歴史の真実”を明かすポーランドツアー」のガイドとして21日、同国に入国したためだ。アーヴィングがポーランドを訪れたのは […]

ホロコースト否定論者として知られる英国の作家、デイヴィッド・アーヴィングが再び物議をかもしている。「“歴史の真実”を明かすポーランドツアー」のガイドとして21日、同国に入国したためだ。アーヴィングがポーランドを訪れたのは初めてではないが、9日間の日程で2,900米ドルの参加料をとるというので、ホロコーストを生き延びたユダヤ人の団体や、反人種主義団体らが強く反発している。

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極右・ネオナチ関連サイトに掲載された「ツアー情報」によると、ヒトラー暗殺未遂事件の舞台となったドイツ国防軍指令本部「ヴォルフスシャンツェ」、ナチス親衛隊長・ヒムラーの拠点、旧ワルシャワ・ゲットー、トレブリンカ絶滅収容所などを訪れることになっている。しかし、ポーランド国内での反発が強まっていることなどから、人目につかないように旅をしているらしく、実際にどこにいるのかは把握できていない。

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アーヴィングは、ナチスによるユダヤ人殺害の事実は否定していないものの、その規模やヒトラーの主導的役割について、著書や講演で歴史学会の通説をねじ曲げる説を披露してきた。アウシュヴィッツ強制収容所についても、英『デイリーメール』紙に「ポーランド当局は強制収容所をめぐる歴史を、“ディズニーランド”風に仕立てて金もうけに利用している」と語り、ポーランドの神経を逆なでした。

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ポーランドでは、ホロコーストを否定することは犯罪となる。これに関連する犯行の調査・訴追を担当する国民記憶院(IPN)は、アーヴィングの動向を注意深く観察するとの立場を表明した。

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アーヴィングは、同じくホロコースト否定が刑法で禁止されているオーストリアで2005年に逮捕され3年の懲役刑判決を受けた。服役は13カ月にとどまったが、刑務所暮らしにへき易したのか、これ以降、行動がやや慎重になっている。

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ポーランドに住んでいたユダヤ人のほとんどはホロコーストで虐殺された。その数は270万~300万人と推定されている。

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