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2011/3/30

コーヒーブレイク

スターリンから名誉市民号をはく奪~ハンガリー

この記事の要約

1990年の体制変換以来、中道右派として初めて市長に選出されたタルローシュ市長がブダペストの「美化」に取り組んでいる。名誉市民号を持たないスターリンから名誉市民号をはく奪したほか、市内にある広場の改名やソ連の記念建造物の […]

1990年の体制変換以来、中道右派として初めて市長に選出されたタルローシュ市長がブダペストの「美化」に取り組んでいる。名誉市民号を持たないスターリンから名誉市民号をはく奪したほか、市内にある広場の改名やソ連の記念建造物の移築などを計画している。20年市長を務めたデムスキ氏に代わって昨年10月に就任したタルローシュ氏だが、メディアは「することがなくて退屈しているのか」と冷ややかな報道ぶりだ。

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スターリンの名誉市民号について社会党は、市議会が2004年に「スターリンは過去にも未来においてもブダペストの名誉市民ではない」とする声明を採択した事実を指摘し、社会政策に議論の時間を割くべきだと主張した。しかし、タルローシュ市長は公文書館で「1947年11月7日に市議会がスターリンに名誉市民号を与えた証拠を見つけた」と言って聞かず、市議会は23日改めて「はく奪」を決議する羽目になった。

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広場の改名は、ハンガリー科学アカデミーのパーリンカーシュ代表の提案に基づくもので、来月6日の市議会で審議される。学会本部があるルーズベルト広場を、学会設立を支援した貴族にちなんで「セーチェニー広場」に、米国大使館がある自由広場(Szabadsag ter)を「ルーズベルト広場」に変えるという。また、タルローシュ市長は、極右政党の市長候補が公約としてとりあげていた「モスクワ広場を19世紀末の首相にちなんで“カールマン・セール広場”に改名」という案についても、検討の用意があると表明している。

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保守新聞『Magyar Nemzet』によると、市長はナチス・ドイツと戦って命を落としたソ連軍兵士を祭るハンガリー解放記念碑を自由広場から移設することも考えており、モスクワ市長と話し合いたい意向だ。ただ、他紙の取材では「現時点ではない」と弱腰になっている。ちなみに、『ブダペスト・タイムズ』紙は、「解放」に関して、第二次世界大戦のほとんどの時期においてハンガリーがナチスと組んで戦っていた事実を指摘し、市長の政治思想を揶揄した。

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ブダペストでも体制変換後、町中からレーニンやマルクス、エンゲルスなどの巨大な像が取り去られた。これらの像は郊外の「メメント・パーク」に集められて公開されている(入場有料)。解放記念碑もいつか仲間入りするかもしれない。

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