中東欧諸国は低廉な労働コストを武器に外国企業の投資を惹きつけてきたが、近年は経済成長に伴う人件費の上昇で、その優位性を失いつつある。こうした中、中東欧に代わる欧州向け生産基地としてモロッコ、チュニジア、アルジェリアなどのマグレブ諸国が注目を集めている。
\中東欧の時間当たりの平均労働費用はポーランドとハンガリーで4~6ユーロ、ウクライナで3ユーロ。これに対し、マグレブ諸国は2ユーロ以下と割安だ。価格競争の激化で常にコスト削減圧力にさらされている自動車部品メーカーの間では、シートカバーやワイヤーハーネスなどの労働集約型部品をマグレブ諸国で行うところが増えている。
\ワイヤーハーネスで欧州最大手の独レオニは、金融危機の最中に中東欧工場で6,000人を解雇し、モロッコとチュニジア工場に生産を移管した。クラウス・プロブスト社長は、多くの手作業を必要とするワイヤーハーネスのような労働集約型製品の生産でマグレブ諸国は5~8年で競争力を持つようになると指摘、「ワイヤーハーネス産業にとって北アフリカは中東欧に取って代わる存在になるだろう」と断言する。こうした見方を裏付けるようにデルファイやリアー、住友電工、矢崎総業、ドレクスルマイアー、グラマーなどの大手サプライヤーが同地に進出している。
\マグレブ諸国で生産するサプライヤーにとって頭痛の種とっているのが納期だ。欧州のサプライヤー業界では平均納期日数は3日だが、マグレブ諸国で生産する場合、10日は必要となる。このため、マグレブ工場では標準化された部品のみを生産し、最終工程は顧客工場に近い中東欧で組み立てるという方式をとっているサプライヤーもある。
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