中・東欧、CIS諸国、ロシアに特化した情報誌

2010/12/1

総合・マクロ

ロシア・EU共同経済圏の構築を提唱=プーチン首相

この記事の要約

ロシアのプーチン首相が、欧州連合(EU)に対し、共同経済圏の構築をも視野に入れた協力緊密化を提案した。11月25日付『南ドイツ新聞(SZ)』紙への寄稿で同首相は、2008年の金融危機が示した問題に対応するには、現在の提携 […]

ロシアのプーチン首相が、欧州連合(EU)に対し、共同経済圏の構築をも視野に入れた協力緊密化を提案した。11月25日付『南ドイツ新聞(SZ)』紙への寄稿で同首相は、2008年の金融危機が示した問題に対応するには、現在の提携の形では不十分と主張。工業政策の統一、企業・研究機関の交流促進などを通じて、ポストモダン世界における競争力向上を図るべきと呼びかけた。

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プーチン首相は、金融危機をきっかけに、経済を再評価し、リスクを検分する必要性が生まれ、金融経済ではなく、実質経済に基づく今後の経済のあり方を問う動きが広まっていると分析する。そして、ロシアとEUの将来の姿として、対等なパートナーシップに基づいた経済的統合を提案する。これにより、資源に依存するロシア経済の弱点と、脱工業化で製造業・ハイテク産業における競争力が後退するEUの弱点が克服され、経済的な成功と競争力の確保が可能となるとの見方だ。

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その前提条件として、まず、工業政策の統一を唱える。「リスボンからウラジオストークに至る」共同経済圏を構築し、ユーラシア大陸に広がる数十億ユーロ規模の巨大市場を実現するのが目的だ。その準備段階として、法律、関税規則、工業関連法規の統一、運輸インフラの整備が必要としている。

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また、「欧州大陸における新たな工業化」として、ハイテクの産業育成や、環境負荷のない生産の実現に向けた露欧間の提携を呼びかける。具体的な産業として、自動車、造船、航空宇宙、製薬、原子力、ロジスティックを挙げている。

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エネルギー分野でも人材育成や技術協力を推進すべきとの考えだ。EUのエネルギー政策については、競争促進を目的とした第3次エネルギー・パッケージを批判。生産事業と販売事業を分離することで投資が滞り、供給の確保が難しくなるほか、相乗効果が失われて小売価格が上昇するとの立場を示した。

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工学分野でも、ロシアによる欧州研究開発プロジェクト参加や、欧州企業によるロシア開発拠点の運営、学術交流などを通じて、人材を育成していくべきと説く。また、工業部門の競争力強化で、欧州におけるエンジニア・熟練労働者の流出・減少を食い止められると主張している。

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そして、交流の前提条件として、ロシア・EU間の滞在ビザ廃止を提案する。これが統合への第一歩になるとの見方だ。

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最後に、20年前に東ドイツの経済発展を待たず、西ドイツへの統合を進めたコール首相(当時)の判断は正解だったと評価。ロシアとEUの経済格差は障害にならないとの立場を示した。

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