天然ガス世界最大手の露ガスプロムは、サハリン沖の資源開発事業「サハリン2」で、三井物産および三菱商事が保有する権益を取得することを計画しているもようだ。現地日刊紙「RBK」が11月23日、国家監査委員会からの情報として報じた。一方、ガスプロムのセルゲイ・クプリヤノフ広報担当は同日、ブルームバーグの取材に対しRBKの報道を否定しており、事実関係は明らかになっていない。
\現在、「サハリン2」の事業会社であるサハリン・エナジーの権益は、ガスプロムが50%、英蘭系国際石油資本ロイヤル・ダッチ・シェルが27.5%、三井物産が12.5%、三菱商事が10%それぞれ保有している。ガスプロムが三井・三菱から権益を買い取った場合、支配権の大部分を手中に収めることになる。
\国家エネルギー安全基金のコンスタンチン・シモノフ会長はRBKの取材に対し、ガスプロムはシェルよりも三井・三菱との方が容易に交渉をまとめられるとの見方を示した。サハリン2」の開発に実際に関わっているのはシェルの英国人技術者や専門家が中心で、日系2社は資本参加にとどまっているためだ。シェルが株式売却には応じる可能性は低いが、日系企業は「ヤマル液化天然ガス(LNG)事業」など魅力的な事業を代わりに持ち込めば、株式売却に応じるだろうと分析している。なお、三井・三菱はこの件に関してコメントを発表していない。
\ロシア政府は2006年、「サハリン2」の開発を進めていたシェル、三井物産、三菱商事に事業認可を取り消すなどして圧力をかけ、3社が共同出資していたサハリン・エナジー株の過半数を国営ガスプロムに売却するよう強制した経緯がある。政府は当時、環境破壊などを理由に挙げたが、実際はエネルギー資源を国家の管理下に置きたいとの狙いがあったものとみられている。
\ \バレンツ海でのガス田開発も急ぐ
\ \24日のブルームバーグによると、ガスプロムは、LNG生産を拡大するため、バレンツ海のロシア領海内にあるシュトクマン・ガス田の開発も急ぐ方針だ。欧州向けの供給を増やすとともに世界市場でのシェア拡大を狙う。ガスプロムは欧州における天然ガスのシェアを2020年までに現在の約25%から32%まで引き上げる計画。輸出先の多角化のため、中国や韓国にパイプラインで供給することや、極東のLNGプラントの拡張、国外のLNG事業への参加も検討している。
\ガスプロムがシュトクマン・ガス田の開発を急ぐ背景には、LNG事業で出遅れたという危機感がある。ガスプロムがLNG生産の拡大を検討している間に、エクソン・モービルやシェブロンなど競合は、オーストラリアや東南アジアのLNG事業で中国石油天然ガス集団(通称ペトロチャイナ=CNPC)と長期供給契約を締結。欧州ではガス需要が伸び悩む一方、ノルウェーやカタールがガスプロムより柔軟な取引条件を提示し、供給拡大を狙っている。
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