ロシアが液化天然ガス(LNG)の生産拡大に取り組んでいる。同国の天然ガス輸出はパイプライン経由が主力だが、主要仕向け先である欧州で分散調達の観点からLNG需要が拡大していることに加え、中東諸国がLNGの輸出攻勢を強めている。こうした動きに対応するため、LNG基地の建設や税優遇措置の実施により、今後20年間でLNGの生産量を7倍に引き上げることを目指す。
\北極海に面するヤマル半島には30を超える未開発のガス田が存在している。独立系ガス会社としてはロシア最大手のノヴァテクは、南タンベイガス田(推定埋蔵量12億6,000万立方メートル)でLNGプラントの建設を計画。16年に稼動を開始し、年間1,500万トンをアジアと欧州に輸出するとしている。完成すれば、天然ガス最大手の政府系ガスプロムが主導するサハリン2に続き、ロシアで2カ所目のLNGプラントとなる。政府は、ヤマル半島におけるLNG事業を振興するため、ヤマロ・ネネツ自治管区でLNGプロジェクト向けに採掘される天然ガスについて鉱物資源採掘税を12年間に渡り免除する方針を表明している。エネルギー省によると、ヤマル半島におけるLNGプラントの年産能力を18年までに1,500万トンとし、長期的には5,000万トンに拡大することを目指すという。
\北極海の一部であるバレンツ海にあるシュトックマン・ガス田でも、LNGプロジェクトが進んでいる。同ガス田で採掘されたガスは、海底に敷設したパイプラインでムルマンスクの北東120キロメートルにあるテリベルカに建設される年産能力750万トンのプラントに送られ、精製・液化されて世界各国に出荷される。テリベルカのLNGプラントの請負業者は12月に決定される予定だ。このほか、極東ネネツ自治管区のチマン・ペチョラ流域のクムジンスコエとコロビンスコエにあるガス田では、ロシアのAlltechグループとその子会社SNネフチガスが、40億米ドルを投じてLNGプラントを建設する計画を発表している。プラントの年産能力は260万トンで、15年頃の完成を予定している。生産されたLNGはタンカーでアジア太平洋地域の国々に輸出するという。
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