昨夏の干ばつで大幅な減作となったロシアが、収穫の安定に向けて農業基盤整備に乗り出す。2020年までに総額8,500億ルーブル(210億ユーロ)を投じ、耕作地の灌漑(かんがい)、排水、土壌改良などを進める。これにより、農業基盤の整った耕地が現在の900万ヘクタールから1,000万ヘクタールに増え、1,050万トンの小麦増産のほか、家畜飼料の収穫増を見込む。必要資金の25%を連邦政府が拠出し、残りは地方自治体および農業経営者が負担する。
\農業省の予算では、灌漑設備の新設費用は1ヘクタール当たり22万5,000ルーブル(5,600ユーロ)、排水設備は同8万ルーブルと見積もられている。計画には、◇防風設備の更新・新設(対象耕地面積:35万ヘクタール)◇塩害土壌の改良(同26万ヘクタール)◇酸性土壌の改良(同170万ヘクタール)――なども盛り込まれ、2012年から毎年約7億ユーロを連邦が支出する。
\ロシアの耕地面積は1,150万ヘクタールと、インド、米国に次いで世界第3位の規模を誇る。ただ、農業基盤整備が済んでいるのは、このうち10%にも満たない。結果として収穫は天候に左右されやすく、干ばつの昨年は穀物収穫量が前年比37.3%減の6,090万トンに低下した。特に小麦は過去5年で最低の4,200万トンに落ち込んだ。
\基盤が整備されている耕地についても、その3分の1は湿原化、度重なる洪水、塩害、土壌の酸性化などの理由で耕作に適さない土地となってしまっている。また農業省によれば散水設備の70%は老朽化しており、特にシベリアやロシア南部でその度合いが激しいという。取水・集水設備や水路、貯水池、ダムについても改修・更新の必要性は高い。
\ロシアは畜産製品の国産化を目標として掲げており、その達成に向けて2020年までに飼料生産を現在の1,800万トンから4,700万トンに引き上げる方針だ。完全自給に必要な畜産農家の飼料需要は9,000万トン弱とみられており、この点からも農地整備が火急の課題となっている。乳製品については2018年までに、畜産製品については2020年までに完全自給化を達成する方針だ。現在の自給率はそれぞれ、40%、20%に過ぎない。
\ \■今年の穀物収穫は8,500~8,700万トン
\ \ロシア農業省によると、今年の穀物収穫量は8,500~8,700万トンとなる見通し。秋まき穀物で4,200万トン、春まき穀物で4,500万トン弱を見込む。
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