ロシアの独立系ガス最大手ノバテクは先ごろ、仏石油大手トタルと資本・業務協定を発表した。北部ヤマル半島でのガス田開発や液化天然ガス(LNG)の輸出に向け、トタルの技術や資金を導入するのが狙い。ヤマルでの生産が本格化すれば、これまで天然ガス輸出事業を独占してきた政府系天然ガス企業ガスプロムの牙城を突き崩すことになる。
\ノバテクの開発するガス田の推定埋蔵量は4,000億立方メートル超。ヤマル・プロジェクトは、年間1,500万トンのLNGを北極航路を通じてアジアや欧州に輸出するというもので、LNG基地を含む設備投資額は200億米ドルに達する見通しだ。ノバテクはプーチン首相と親しい大富豪ゲンナジー・ティムチェンコ氏が筆頭株主で、ロシア政府はヤマル・プロジェクトに資源採掘税の免税などの優遇措置を適用するなど後押ししている。同首相は昨年、LNGが天然ガス輸出に占める割合を20年までに10%、30年までに15%に引き上げる方針を示している。
\トタルは、ガスプロムが進めるバレンツ海のシュトクマン・ガス田の開発プロジェクトにも参加している。同ガス田は当初16年にガス生産を、17年にLNG生産をそれぞれ開始する予定だったが、開発スケジュールの遅れからガス生産のスタートが18年に先送りされる公算が強まっている。ウラルシブ・フィナンシャルのチーフストラテジスト、クリス・ウィーファー氏は、ノバテクのヤマル・プロジェクトは、サハリンを除けばロシアで最も重要なLNG事業だと指摘。「トタルがノバテクと組んだことは、同社がシュトクマン・プロジェクトの先行きに懸念を持っていることを自ら認めたようなものだ」とコメントした。同氏はまた、ロシアが世界LNG市場で足場を築くには、不安要素の多いシュトクマン・プロジェクトが軌道に乗るのを待つよりも、ノバテクのプロジェクトを促進する方が確実性が高いと分析する。一方、ユーラシア・グループのアナリスト、クリフ・カプチャン氏は、ノバテク・プロジェクトが成功すれば、LNG事業でノバテクがガスプロムを脅かす存在になりうるとの見方を示している。
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