福島第一原子力発電所の事故をきっかけに欧州諸国などで脱原発の議論が活発化するなか、トルコ政府は従来の原子力政策を堅持する姿勢を明らかにした。地中海沿岸のアックユと黒海沿岸のシノップに原発を設置する方針で、アックユについてはロシア原子力公社(ロスアトム)に建設工事を発注済みだ。シノップについては当初有力視されていた韓国電力公社(KEPCO)が昨年11月に交渉を断念。福島原発を操業する東京電力の受注が確実となっている。
\トルコは原子力エネルギーの積極利用を目指しており、福島原発事故が起こった後も、「リスクをゼロにしろというのなら、プロパンガスで料理もできない」(エルドワン首相)などとして、計画変更は不要との立場を明らかにしている。
\トルコは経済成長に伴う電力需要をまかなうため、2023年までに国内2~3カ所で原発の操業をスタートする方針だ。アユック原発は今年の4月末~5月に着工、2018年に運転を開始する予定。総工費は200億米ドルに上る見通しとなっている。シノップ原発については、現在、福島原発の建設・操業元である東芝と東京電力の代表者が首都アンカラに滞在。月末までの受注契約締結に向けて準備を進めている。
\チェルノブイリ原発事故のときには「適正量の被ばくでは媚薬(びやく)の効果がある」など、放射能の危険を軽視する報道もあったトルコだが、今回は様相が変わっている。大衆紙『Aksam』は「原発惨事を発注するようなもの」と批判。サッカーチーム、ベシクタスの応援団は13日の試合の際に「トルコに原発は要らない」と書かれた大きなプラカードを掲げた。エルドワン首相の「プロパンガス」発言については、技術者会議所のゲクタス代表から「科学的認識を無視した無責任な態度」と非難の声があがった。
\ユルドゥズ・エネルギー相の一連の発言に対しても、核工学士のヤルマン氏が「救いようがない無知さ加減」と痛烈に批判している。同相は地震直後の11日に日本の原発が「テストに合格した」と発言。12日の福島第一原発1号炉の水素爆発後には、「問題は放射能ではなく情報の改変だ」と述べた。さらに炉心溶融の危険が報じられた13日にはテレビで「トルコが建設するのは最新式の原発で、福島の古い原子炉とは比べられない」と話した。
\自然保護団体Doga Dernegiのエケン氏は「最悪事故を起こしたロシアと日本から原発を買うとは、何という皮肉」とコメントしている。
\トルコの反対派は、同国が地震多発地帯に位置している事実を強く懸念している。アックユ原発の建設予定地はエジェミシュ断層から約25キロの近距離にあり、電気工学会議所も地震の危険が大きな地域での建設に反対していた。
\