プーチン首相の次期大統領就任が確実視されるなか、ロシアが近く世界貿易機構(WTO)に加盟する可能性はほぼなくなった。保護主義的な経済政策で知られる同首相が、輸入関税の撤廃など、加盟に必要な改革を急ぐとは考えられないためだ。輸出が経済成長のカギを握る欧州連合(EU)は、重要な取引先であるロシアとの自由貿易の実現が先送りになったことに落胆している。
\プーチン流の経済政策は、◇石油・天然ガス輸出によって得た収入を、政府支出や社会保障費を通じて経済に投資する◇自動車産業など旧態依然とした産業分野は、輸入関税と助成で保護する――というもの。同首相は先ごろも「WTOに加盟しなければ、自由な貿易政策が行える」と言明するなど、加盟に積極的ではない。ナビウリナ経済相はプーチン首相の大統領選出馬表明を受けて、「年内に(WTO加盟)交渉が完了する可能性はごく小さい」と発言した。ホーマン独経済技術事務次官は、ロシア市場の開放だけではなく、法の適正手続き(デュー・プロセス)が保障されるかどうかに関わる問題とコメントしている。
\ロシアのWTO加盟の障害となっているのは、(1)輸入障壁(2)農業補助(3)牛肉輸入制限(4)グルジアの反対――などだ。(1)については、国内自動車産業保護を目的とした高い輸入関税が問題の中心となっている。(4)は、2008年の南オセチア紛争を機に、ロシアとグルジアの関係が決定的に悪化していることに理由がある。スイスが解決に向けて仲介する予定だ。
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