中・東欧、CIS諸国、ロシアに特化した情報誌

2012/1/18

総合・マクロ

ロシアとウクライナ、ガス取引で対立

この記事の要約

ロシアとウクライナが天然ガス取引をめぐって再び対立している。ウクライナがロシアからの輸入量を270億立方メートルにほぼ半減させる意向であるのに対し、ロシア側は契約に準じた代金支払いを要求している。また、値引きの条件として […]

ロシアとウクライナが天然ガス取引をめぐって再び対立している。ウクライナがロシアからの輸入量を270億立方メートルにほぼ半減させる意向であるのに対し、ロシア側は契約に準じた代金支払いを要求している。また、値引きの条件として進められているウクライナのパイプライン事業権益の取得についても交渉は平行線状態で、解決の糸口が見えていない。

\

報道によると、両国は2009年に長期契約を結び、2010年からの年間取引量を520億立方メートルとすることで合意した。ウクライナは毎年1月1日付で取引量を416億立方メートルまで引き下げることができるが、前年6月末までにロシアが減量に同意することが必要だ。契約では、事前に取り決めた年間取引量に満たない分について価格の80%が支払われることになっている。

\

契約違反とのロシア側の批判に対し、ウクライナは昨夏の時点で輸入を縮小する意向を表明したと反論。書面で繰り返し取引量の見直しを要請してきたと主張している。

\

ウクライナはまた、数カ月前からロシアにガス価格の引き下げを求めている。ロシアはその代償としてウクライナのガスパイプライン運営事業に出資する許可を要求。しかし、交渉はパイプラインの評価額や値引きの規模をめぐって意見が対立し、足踏み状態だ。ウクライナ政府は15日のガス価格交渉開始を前に、ロシアからの出資受け入れに必要な法律改正案の議会提出を一旦、見送った。

\

ロシア産ガスの欧州に向けた重要な輸出経路であるウクライナは、以前からその地位を利用してガス輸入で有利な条件を引き出そうと努めてきた。両国の対立が先鋭化してガス輸送に支障をきたし、欧州諸国がガス不足に陥ったことも一度きりではない。ロシアは欧州への供給安定化に向けてバルト海パイプライン「ノルド・ストリーム」を稼動させたほか、南欧に向けたパイプライン「サウス・ストリーム」の新設にも取り組んでいる。

\

ロシアは2010年にウクライナ経由で欧州に954億立方メートルの天然ガスを供給し、ウクライナに送ガス手数料として13億米ドルを支払った。今年は供給量を2010年より50億立方メートル減らす見通し。ウクライナのパイプライン事業の採算は十分確保できるレベルだ。

\