中・東欧、CIS諸国、ロシアに特化した情報誌

2012/1/25

総合・マクロ

「ウィーン・イニシアチブ」の復活検討、中東欧での信用収縮を懸念

この記事の要約

欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)、欧州復興開発銀行(EBRD)が中東欧地域で大規模な信用収縮が起きる事態に備えて、支援の準備に動いている。欧州銀行監督機構(EBA)が求める資本増強を達成するために、西欧の金融機関 […]

欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)、欧州復興開発銀行(EBRD)が中東欧地域で大規模な信用収縮が起きる事態に備えて、支援の準備に動いている。欧州銀行監督機構(EBA)が求める資本増強を達成するために、西欧の金融機関が中東欧から資本を引き揚げる可能性があるためだ。EBAも西欧の銀行が20日提出した資本増強策の精査で、中東欧への影響を考慮に入れることに同意した。

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具体的には、リーマンショック後の信用収縮で大打撃を受けた中東欧経済の救済を目的に、2009、10の両年に実施された「ウィーン・イニシアチブ」の復活が計画されている。これは、西欧の銀行が中東欧の子会社から資本および流動資産を引き揚げないことを取り決めたものだ。

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西欧の銀行による資本引き揚げが懸念される背景には、EBAが今年6月末までに狭義の中核的自己資本比率(Tier1)を9%以上に引き上げるよう域内の主要行に求めていることがある。多くの銀行が、融資縮小や非中核事業の売却による資産圧縮を通じて資本増強を目指す方向だ。このため、EBAはすでに11日の時点で、債務危機との関連において資本規制の水準を維持する必要性があるかどうかを検討する姿勢を示した。

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オーストリア金融市場監督庁(FMA)が来月から、国内主要行に対して中東欧における新規融資を制限する基準を導入することに対しても、EBRDのベルクロフ主任エコノミストは批判的だ。「危機が一つの銀行から他の銀行へ、一つの国から他の国に波及するのを防ぐため、国際的な取り決めが必要」であることが「2008年の危機の教え」であったと話す。

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FMAはエルステ、ライフアイゼン・バンク・インターナショナル、伊ウニクレディトグループのバンク・オーストリアなど国内大手銀行に対して、今後、新規融資の上限額を新規預金額の110%に制限する。中東欧融資の平均値は、現在でも預金と融資残高の比率は新基準の100対110を下回る。ただ、市場によっては100対200を超える不均衡があるのも確かだ。

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中東欧諸国の多くは主要な貸し手であるオーストリアの銀行の貸し渋りを懸念している。

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