テメリン原子力発電所の拡張プロジェクトの採算がとれる確率が半分以下であることが、プラハのコンサルティング会社キャンドール・パートナーズ(Candole Partners)が実施した事業性調査で明らかになった。一般の商業プロジェクトで投資家が受け入れる採算割れリスク(5%以下)を大きく上回っており、実施の是非については、エネルギー供給安定化など経済性以外の根拠づけが重要な判断基準となる見通しだ。
\チェコ国営電力CEZは、テメリン原発で原子炉2基の新設を計画している。総工費は推定2,000億コルナ(80億ユーロ)。新設される2基のうち、1基は2023年、もう1基はその18カ月後に稼働する予定だ。
\キャンドールは、メディアで報じられている情報をもとにプロジェクトの採算性を計算した。計画の遅延など、追加的なコスト要素は考慮していない。CEZが投資金額のうち、自己資金で30%を、借入資金で70%を賄うと仮定した。また、原子炉の稼働期間における電力価格の上昇率は年2.5%とした。
\その結果、プロジェクトが新設原子炉の耐用年数内に損益分岐点に達する確率は46%であることが分かった。CEZのコスト負担を減らすには、政府が◇融資保証の実施◇原発電力の固定価格買い取り制度などの助成制度導入――などの対策をとる必要がある。ただ、欧州法や国内競争法の枠内で実行するのは至難の業だ。
\プロジェクト推進の根拠は経済性だけではない。エネルギーの安定供給、雇用創出、プロジェクト参加企業からの技術移転といった側面も考慮される。しかし、採算性のないプロジェクトを推進するとすれば、政府の立場が難しくなるのは明らかだ。
\テメリン原発拡張工事の入札では、東芝の米国子会社ウエスチングハウスと、ロシア原子力公社(ロスアトム)、仏アレバがそれぞれ率いる企業連合が応札を予定している。応札期限は今年7月2日で、来年に落札企業が決まる見通しだ。
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