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2012/8/1

総合・マクロ

ルーマニア大統領続投へ、国民投票成立せず

この記事の要約

ルーマニアで29日行われたバセスク大統領罷免の是非を問う国民投票は、選挙管理委員会の同日夕発表で投票率が45.92%と投票成立に必要な過半数に届かず、大統領が職務に復帰する見通しとなった。ただ、現地テレビ局「レアリターテ […]

ルーマニアで29日行われたバセスク大統領罷免の是非を問う国民投票は、選挙管理委員会の同日夕発表で投票率が45.92%と投票成立に必要な過半数に届かず、大統領が職務に復帰する見通しとなった。ただ、現地テレビ局「レアリターティヤTV」の出口調査では投票者のうち罷免に賛成したのは86.9%の高率に上り、大統領への不満の大きさが改めて示された格好だ。今回の国民投票は、実施に至る政府の手法が民主主義の原則や司法の独立を侵害するとして国際的な批判を呼び、その行く末が注目を集めていた。

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バセスク大統領は投票終了後、経済不振、緊縮財政策の実施などで強まっている国民の不満に理解を示し、「社会の分裂を食い止め、調和を図るため尽力したい」とコメントした。

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一方、ポンタ首相は「(投票所に足を向けた)900万人の意思を無視することは常識外」として、間接的にバセスク大統領の辞任を求めた。しかし、罷免の試みが失敗したことで、同首相の政治的弱体化は避けられないとみられる。

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今回の国民投票には、バセスク大統領とポンタ首相の権力闘争が背景にある。大統領の出身党である中道右派の民主自由党(PDL)とハンガリー人民主同盟(UDMR)による前連立政権は、議会による4月の内閣不信任決議で退陣。代わってポンタ首相率いる中道左派・社会民主党(PSD)と国民自由党(PNL)などから成る社会自由連合(USL)が5月に政権に就いた。

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政府は大統領が職権を乱用しているとして憲法に基づき罷免を試みた。しかし、憲法裁判所が職権乱用の事実を否定したため、同裁判所の権限を縮小した。先月初めには上下両院の議長とオンブズマンを更迭するなど、議会および司法への介入を加速。同6日に上下院合同会議で大統領の職務停止を決定した。

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これら一連の議会・司法介入の動きに対しては欧州連合(EU)など国外から強い批判が上がった。罷免に関する国民投票の成立に「有権者の過半数の投票」を必要とする条項を政令で撤廃したことが特に問題視され、EUの圧力で同条項が復活した。これがなければ、今回の国民投票でバセスク大統領は罷免されるところだった。(東欧経済ニュース7月25日号「法の支配と司法の独立の確保求める、欧州委がルーマニアに」、7月11日号「ルーマニア議会、大統領の職務停止を可決」を参照)

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