中・東欧、CIS諸国、ロシアに特化した情報誌

2012/8/29

総合・マクロ

ロシア、WTO加盟

この記事の要約

ロシアが22日、世界貿易機関(WTO)への加盟を果たした。これにより、国内経済の保護措置が段階的に廃止されて輸入が拡大し、ビジネス環境も改善すると期待されている。\ WTO加入により、輸入関税の平均税率は5.9ポイント低 […]

ロシアが22日、世界貿易機関(WTO)への加盟を果たした。これにより、国内経済の保護措置が段階的に廃止されて輸入が拡大し、ビジネス環境も改善すると期待されている。

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WTO加入により、輸入関税の平均税率は5.9ポイント低下する。外国製消費財の販売価格が下がるのは確実で、電器量販店のMビデオでは来店客数の伸びを見込む。

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一方で国内産業の衰退を懸念する声も強い。政府による産業助成は大きな問題で、交渉の末、ロシアは廃止に向けて7年の移行期間を得ることに成功した。この7年でいかに産業の近代化が成るかが勝敗を決める。

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ロシアでは一つの工場を中心に形成された単一産業都市「モノゴロド」が多い。モノゴロドはプーチン大統領の支持基盤ともなっており、産業が衰退してモノゴロドを直撃し、町全体が窮乏すれば、反政府運動の温床となる可能性もある。

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■EU、輸出拡大に期待

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欧州委員会はロシアのWTO加盟を歓迎している。ドグヒュト通商担当委員は、「ロシアとの取引、ロシアへの投資が容易になり、ロシア経済の近代化が加速する。ロシア・欧州企業の双方にとって多くの事業機会が生まれる」とコメントした。

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欧州委は、ロシアの関税率引き下げで欧州連合(EU)の企業が年間25億ユーロを節減できると推定する。また、貿易が活発化して対ロシア輸出が年間39億ユーロ増加すると見込む。

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EUの対ロシア輸出額は2011年に1,084億ユーロ、ロシアからの輸入額は1,995億ユーロだった。対ロシア投資額は2010年に約1,200億ユーロに上り、他国をリードしている。同年のロシアによる対EU投資は420億ユーロだった。

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一方で、米国はロシアへの輸出で高い関税を払わなければならなくなる可能性がある。ロシア側が、旧共産圏との貿易を制限する通商法の「ジャクソン・バニク修正条項」を根拠に、通常より高い関税率を適用する構えだからだ。米国は1992年以来毎年、同条項の権利を放棄しているが、ロシアは条項の廃止を求めている。

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