中・東欧、CIS諸国、ロシアに特化した情報誌

2013/4/10

総合・マクロ

セルビアの加盟交渉開始に暗雲、コソボとの関係改善協議が決裂

この記事の要約

EUの仲介で昨年10月から行われてきたセルビアとコソボの関係正常化に向けた協議が3日、合意に至らないまま終了した。EU加盟候補国のセルビアは、国家承認していないコソボとの関係改善が加盟の条件となっていることから、早期の加 […]

EUの仲介で昨年10月から行われてきたセルビアとコソボの関係正常化に向けた協議が3日、合意に至らないまま終了した。EU加盟候補国のセルビアは、国家承認していないコソボとの関係改善が加盟の条件となっていることから、早期の加盟交渉開始は難しい情勢となってきた。

\

コソボは2008年、セルビアからの独立を一方的に宣言。これまでにEU22カ国を含む90カ国以上が国家承認したが、セルビアは承認を拒んでいる。

\

セルビアは2008年にEU加盟の前段階である「安定化・連合協定(SAA)」を締結。2012年3月にEUから加盟候補国として正式認定された。EU入りに向けた次のハードルとなる加盟交渉開始は、コソボとの関係正常化が条件となっている。

\

EUの仲介で設定された双方の協議は、予定では8回目となる今回が最後。加盟交渉開始に向けてコソボとの対話を積極的に進める路線に転換したセルビアのダチッチ首相は協議で、独立を認めない姿勢を軟化させ、コソボ北部で多数派を占めるセルビア系住民に独自の警察、司法制度の運営を含む自治権が与えられることを条件に、コソボを承認することを提案した。

\

しかし、コソボのサチ首相は、自治権を認めるとコソボ内の民族対立が解消されず、国家運営が困難になるとして受け入れを拒否。12時間に及ぶ協議は物別れに終わった。双方は予定を変更し、交渉を継続することに含みを残しているが、協議に立ち会ったEUのアシュトン外交安全保障上級代表は声明で「双方の溝は狭まったが、なお深い」としており、早期の妥結は微妙な状況だ。

\

 EUはセルビアとの加盟交渉開始について、アシュトン代表が4月中旬にまとめる報告書の内容を検討した上で、6月に是非を決定する予定。このためセルビアは今回の協議でコソボとの関係正常化を実現したい考えだった。再協議で合意にこぎ着けなければ、6月の加盟交渉開始決定は絶望的となる。

\