ウクライナのニコライ・アザロフ首相は5月31日、ミンスクで開催された旧ソ連邦諸国(CIS)首脳会議で、ロシア、カザフスタン、ベラルーシの3カ国で構成する関税同盟のオブザーバー・ステータス獲得に関する覚書に調印した。これは同国のヤヌコビッチ大統領がオブザーバー参加の意向を同29日に表明したことを受けたもので、ロシアとの経済関係が今後、強まる可能性がある。
\ウクライナのヤヌコビッチ大統領は欧州連合(EU)加盟を目指すなど欧州統合路線を推し進めており、関税同盟への参加には消極的だった。同国は12年4月にEU加盟の前段階となる「安定化・連合協定(SAA)」の仮調印にこぎつけたものの、ヤヌコビッチ大統領の政敵であるティモシェンコ前首相が職権乱用罪で有罪判決を受けたことをきっかけにEUとウクライナの関係は冷え込み、加盟交渉は事実上、ストップしている。
\一方、ロシアのプーチン大統領は、CIS諸国が政治・社会的に統合を深める「ユーラシア同盟」を2015年までに設立する目標を掲げており、ウクライナをその前段階である関税同盟に引き入れることは目標達成のうえで重要な布石となる。同大統領は5月第4週の週末にヤヌコビッチ大統領と非公式会談を行い、ウクライナの関税同盟参加を強く働きかけたもようだ。
\ただ、ウクライナのオブザーバー・ステータスは政治的な戦略に過ぎないとする見方もある。EUの欧州委員会の関係者は「EUとウクライナの協力関係を妨げるものではない」としている。
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