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2013/12/11

コーヒーブレイク

コーヒー文化で無形遺産登録~トルコ

この記事の要約

アゼルバイジャンの首都バクーで開かれていたユネスコの政府間委員会において5日、「トルココーヒーの文化と伝統」が日本の和食、韓国のキムチと並んで見事に無形文化遺産の正式認定を受けた。\ コーヒーの起源伝説としては、「エチオ […]

アゼルバイジャンの首都バクーで開かれていたユネスコの政府間委員会において5日、「トルココーヒーの文化と伝統」が日本の和食、韓国のキムチと並んで見事に無形文化遺産の正式認定を受けた。

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コーヒーの起源伝説としては、「エチオピアで羊が豆を食べ眠れなくなったのを見た羊飼いが、その豆を食べてみたら疲れが和らぎ元気になった。近くの僧がこれを眠気覚ましに用いるようになった」というのが有名だ。最初は煎じて薬用に用いられたため、飲み物になったという。

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トルコに伝わったのは1517年。オスマン帝国のセリム一世がエジプト・カイロを征服してマルムーク朝を倒し、イエメンから献上されたのを持ち帰ったのがはじまりという。1544年にイスタンブール初のカフェハウスがオープンする。

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その後、ベネチアの商人がイスタンブールからイタリアにコーヒーを輸入し、現在の「エスプレッソの国」の基を作った。一足先に無形文化財指定を受けた「ウィーンのカフェ文化」も、そもそもオスマン帝国軍が1683年、第二次ウィーン包囲戦で敗退した際に置いていったコーヒー豆が起源というからすごい。

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トルココーヒーは、冷水に挽き豆と砂糖を混ぜて一緒に煮出した上澄みを小さなカップに入れて飲む。表面に細かな泡が浮かんでいるのがおいしいとされるが、コーヒーを淹れ続けて数十年というドゥマンさん(80)にコツを聞くと「よい豆を使う」と至って単純。豆を見極める力がすべてらしい。

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「チャイ(お茶)」が主流のトルコでコーヒーはちょっと改まった感じがあるということだが、結婚相手の家に、男性が両親を連れて挨拶に行くときにもコーヒーは欠かせない。女性が男性に出すコーヒーには塩が入っていて、これを飲み干すのが「男の度量」とされているからだ。すでに形式化されているため、今では楽しいしきたりだという。

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トルコには「1杯のコーヒーにも40年の思い出」ということわざがあるそうだ。小さな親切はずっと記憶に残ることをあらわしている。意味は違うが、最初に塩を入れられた男性とその場に居合わせた人たちも、この1杯のコーヒーが一生忘れられない思い出になり、コーヒーを飲むたびに皆で笑いあったのではないだろうか。生活の中の何気ない小さなものたちが、生き生きと記憶を呼び覚ます。そんな情景が思い浮かぶ。

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