メドベージェフ首相は今月5日から4日間の日程でベトナムとタイを訪問し、ロシアが両国との関係緊密化に本腰を入れる姿勢をアピールした。ウクライナ紛争をめぐって主要取引先である欧州との関係が悪化していることを受けたもので、中国だけでなく東南アジア諸国とも貿易を拡大し、活路を開く狙い。具体的な成果はまだ小さいが、今後の関係深化に向けた意思を明確にした。
メドベージェフ首相はベトナムで、ロシアが主導するユーラシア経済同盟(EEU)と同国との自由貿易協定(FTA)交渉がほぼ終了し、7月にも締結できる見通しと発表した。ロシアにとっては、東南アジア諸国連合(ASEAN)市場に進出する大きな足掛かりになる。
また、ガスプロムの石油事業、ガスプロムネフチがベトナム石油ガス公社(ペトロベトナム)傘下のビンソン製油・石油化学(BSR)の株式49%を取得することが決まった。このほか、金融・資源開発分野で複数の合意を結んだ。
タイでは、ロシア国鉄(RZD)が採炭・発電大手のバンプーと、インドネシアのインフラ整備プロジェクトで協力することで合意したほか、ロシアがタイから防衛産業向けラバーを8万トン輸入することを約束した。また、ロシア製兵器のタイへの輸出でも交渉を開始した。
一方、以前の発表で今年1月に締結が見込まれていたFTAの締結は今回も見送られた。
ロシアは今回のメドベージェフ首相訪問で、東方に軸足を移す同国の戦略が中国との関係強化にとどまらないことを示した。しかし、ロシア科学アカデミーのマジリン・ベトナム・アセアンセンター所長によれば、欧米専門家の見方に反し、東南アジア地域で中国と勢力争いをする意図はないという。
メドベージェフ首相は、タイとの貿易高を来年に14年比で2倍の100億米ドルに、ベトナムとは5年後に同2.7倍の100億ドルに拡大する目標を示した。一方で中国はすでに今年の時点でタイとの貿易高が1,000億ドル、ベトナムとは600億ドルに上る見通しで、ロシアに対し比較にならないほどの差をつけている。