政府による厳しい統制で知られる北朝鮮。この国で外国人向けとはいえ、チェコのオリジナル設備で醸造されたビールが売られているというから驚きだ。
設備を輸出したのはフラデツ・クラーロヴェーを本拠とするエンジニアリング会社ZVUポテズ(Potez)。在プラハ北朝鮮大使館の商務官から直接オファーを受け、2012年に契約を結んだ。
設置先は北朝鮮の北東部、中国・ロシアと国境を接する羅先経済貿易地帯だ。外国資本に開かれた経済特区で、同地に入るには中央政府ではなく、羅先市当局に許可を申請すればよい。このため、中国やロシアからの訪問客が多いようだ。
ZVUポテズは2013年に小規模醸造所を開所した。契約額は350万コルナ(約12万7,000ユーロ)で、当初1年間の原材料(麦芽、ホップ、酵母)を納入し、醸造専門家も半年派遣した。
その味はというと、契約前に北朝鮮代表がチェコの様々なビールを試飲した結果、チェコ本場のピルスナーを醸造することに決まった。年産能力は1,000ヘクトリットルと小さいため、経済貿易地帯以外に出荷する余裕はない。現地のレストランで500ccグラス1杯あたり約1.5ユーロで売られている。価格設定からも、外国人客か平壌(ピョンヤン)の富裕層を対象としていることがわかる。
北朝鮮との取引についてZVUポテズは、設備の輸入規制で手続きが煩雑だったり一部部品が納入できなかったりしたが、代替技術を考案して品質を維持することに成功したと満足げだ。独裁政府と関係を持つことについても、「ビールは食品であり、食品製造技術を販売することに良心の呵(か)責はない」としている。
同社では東アジア市場の将来性を高く評価しており、醸造設備を足がかりに韓国でも商機をうかがう。現在は北朝鮮政府が計画する砂糖工場建設でも設備納入のチャンスがあるかどうか、検討中だ。(1CZK=4.67JPY)