欧州連合(EU)とEU未加盟の南東欧6カ国は8月27日、ウィーンで首脳会議(第2回西バルカン会議)を開催した。会議では南東欧6カ国と他の欧州諸国との格差縮小に向けて、EUが同地域のインフラ整備プロジェクト10件に総額6億ユーロを支出することを決定した。一方、EUを目指す中東からの難民が急増し、南東欧がその経由地となっている問題については、14日のEU緊急内相会議で対策を検討するとした。
今回、EUの助成が決まったのは、◇セルビア・ニシュ―コソボ・プリシュティナ―アルバニア・ドゥラス間の高速道路整備
◇セルビアのベオグラードとボスニア・ヘルツェゴビナのサラエボを結ぶ鉄道路線の復旧・近代化――などのプロジェクト。また、今後数年でさらに24件のプロジェクト(総額77億ユーロ)を実施することも決定した。
会議主催国オーストリアのミッテルレーナー経済相によると、これらのプロジェクトが全て実行されれば、南東欧6カ国の国内総生産(GDP)を1ポイント押し上げる効果が見込める。また、今後15年間で20万人の雇用が生まれるという。さらに、知識と実務を同時に学ぶ「デュアル職業研修システム」の導入も進める。国内の雇用創出と職業研修の質向上で、高失業率と、青年層を中心とする国外への人口流出に対処する考えだ。
一方、EUを目指す中東などからの難民が急増している問題では、会議当日にオーストリアで乗り捨てられたトラックから難民とみられる71人の遺体が発見され、大きな影を落とした。経由国となっている南東欧諸国は以前から、EUに早急な対応策の見直し・具体化を求めてきた。欧州委員会は今月から、南東欧諸国とトルコに対し難民対策費として、800万ユーロの支援を行う方針を固めたもようだ。また、今月14日にブリュッセルで緊急内相会議を開き、対策を検討する。
西バルカン会議は南東欧6カ国間の提携と欧州への統合を促進する目的で昨年、ベルリンで初めて開催された。1年に1度のペースで定例化され、来年はパリでの会合が予定されている。