オーストリア金融大手エルステ・グループのハンガリー子会社エルステ・バンク・ハンガリー(EBH)は1日、第三者割当増資を実施した。引受先はハンガリー政府および欧州復興開発銀行(EBRD)で、総額777億8,000万フォリント(約2億5,000万ユーロ)を調達した。政府およびEBRDの出資比率は各15%。登録資本金は1,460億フォリントに拡大した。
今回の取引は、エルステ、ハンガリー政府、EBRDの三者による昨年2月の合意に基づくものだ。エルステ・グループのトライフル頭取は、政府による影響力行使を極力避ける方針で知られる。それにも関わらず、ハンガリー政府の出資を受け入れた背景には、オルバン首相の強い圧力がある。
銀行税や、外貨建て個人債務の国内通貨への強制換算などでハンガリーの外資系銀行は多大な支出を迫られ、EBHでは2011年以来、赤字決算が続いている。複数の銀行が共同で欧州委員会への苦情を申し立てたが効果がなく、トライフル頭取は銀行税引き下げと引き換えに政府からの出資を受け入れることを決断したようだ。
苦慮の策であることを示すように、政府の資本撤退の道筋はすでについている。政府は持ち株をいつでも手放すことが可能で、エルステは5年後に政府保有株を買収する権利を得る。また、EBRDは持ち株を5~9年後に売却する権利を得ている。(1HUF=0.36JPY、東欧経済ニュース2016年6月29日号「ハンガリー政府とEBRD、エルステ子会社に共同出資」、2015年2月11日号「ハンガリーが銀行税引き下げ、EU平均水準まで減額」を参照)