米政府とトルコの関係が悪化、米国領空の航行禁止は解除に

トルコにおけるクーデター未遂以来、同国と米国の関係が緊張を増している。米国連邦航空局(FAA)は16日、安全性への懸念を理由にトルコ発着便の米国領空航行を8月末まで禁止すると発表。18日に解除したものの、トルコのフラッグキャリアで米国定期便を運航するトルコ航空は17日に株価が過去3年で最安値を記録するなど、大きな打撃を受けた。

両国関係はすでに、トルコによるシリア反政府派支援やエルドアン大統領の強権政治化などできしみ始めていた。米国は今回のクーデターが失敗に終わったことを歓迎しながらも、司法・行政関係者の大量逮捕などを受け、「クーデター関与者の処罰は法に則って」と呼びかけている。

エルドアン大統領の政敵で、米ペンシルバニア州に住むギュレン氏の身柄引き渡しでも意見の相違が明らかになった。「証拠がなければ引き渡せない」とする米国に、トルコのユルドゥルム首相は「ギュレンに味方する国はトルコと交戦状態にあると解釈する」、ソユル労働相は「クーデターの黒幕は米国」などと発言して圧力をかけた。これに対し、ケリー国務長官はトルコのチャヴシュオール外務相との電話会談でその事実を強く否定するとともに、このような発言が両国関係を悪化させるとけん制した。

米国は数々のテロ事件に続き、クーデターが起こったことを重くみて、トルコ渡航を予定する米国民に「旅行を考え直す」よう要請するなど、他国に比べても治安悪化に敏感な反応を示している。

ただ、米国にはトルコに正面から強い姿勢で臨めない事情がある。トルコが北大西洋条約機構(NATO)の同盟国として地政学的な重要な位置を占めるためだ。シリアやイラクの「イスラム国(IS)」を空爆する航空機は、トルコ南部のインジルリク基地を拠点としており、トルコとの関係は中東戦略に大きく関係してくる。

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