ポーランドが情報通信技術(ICT)のアウトソーシング先として注目を集めている。高度に専門化した需要に対応でき、人件費も割安だからだ。ただ、その分ICT人材の流出も多く、業界では4万~5万人が不足していると推測される。
国際会計事務所のKPMGはポーランドを「欧州における高度なITソリューションの立地として最良と評価する。受託サービス業界団体ビジネスサービス・リーダーズ協会(ABSL)によると、今年1-3月期のICTアウトソーシング業界従事者は21万2,000人に上り、20年までに30万人への増加が見込まれる。
都市別ではクラクフが業界従事者の4分の1を擁してトップ。ワルシャワとヴロツワフが各3万人強とこれに続く。グダニスク、ソポト、グディニアの3都市は合計1万6,000人前後、ウッヂも約1万6,000人を数える。ポズナニは1万1,000人強となっている。
サービス内容はソフトウエア開発を含むケースが多く、業界従事者の3分の1は開発業務に携わる。顧客の業界では金融業界やICT業界が多い。また、サービスセンターの3分の2がドイツの顧客を持つ。
求人の増加に伴い、業界賃金も上昇している。中央統計局(GUS)によれば、今年上半期の税込み平均賃金(月額)は前年同期比4.1%増の7,599.24ズロチ(約1,760ユーロ)と、全業界中で最も高い。また、人材コンサルティング企業のセドゥラク&セドゥラクの調べでは、完全フレックスタイム制や在宅勤務制の利用、社用PCの支給、職業研修といった福利厚生措置も手厚いという。
将来性を評価してか、ICT関連学科の人気は高く、2014/15年度の専攻学生数は7万人弱に上った。それでも人手不足は深刻だ。その一部を埋めているのがウクライナ人。ウクライナの方が賃金が高く税率も低いが、自己開発の可能性が広がることや、西欧での就職を探す中間点としてポーランドで働く意味を見出しているもようだ。(1PLN=26.24JPY)(●●ページの「目で見る東欧・CIS経済」『ポーランドIT業界統計』を参照)