クロアチアで11日に実施された議会選挙(定数:151)は、中道右派の与党・クロアチア民主同盟(HDZ)が2議席増の61議席を獲得し、第1党の地位を維持したものの、過半数には届かなかった。社会民主党(SDP)率いる中道左派連盟は2議席減の54議席だった。
中道改革政党の「モスト(橋)」は6議席減の13議席を獲得した。左派ポピュリスト政党「人間の壁(Zivi zid)」は予想を大きく超える7議席増の8議席に急進した。ザグレブのミラン・バンディッチ市長が率いるポピュリスト政党「ミラン・バンディッチ365―労働・連帯党(MB365)」は2議席を維持した。このほか、地方政党「イストリア民主会議(IDS)」が3議席、極右「スラヴォニア・バラニャ・クロアチア民主同盟(HDSSB)」が1議席、無所属が1議席などとなった。投票率は52.4%と昨秋の選挙を8ポイントも下回った。
クロアチアでは昨年11月に議会選挙が行われ、HDZとモストが無所属のオレシュコヴィッチ氏を首相とする連立政権を樹立した。しかし、HDZのカラマルコ党首(当時)のナショナリズム発言などが問題となり、当初から政権運営が難航。今年5月にはハンガリー石油大手MOLによる子会社INA株取得をめぐるカラマルコ党首の金銭スキャンダルが発覚して連立が崩壊、6月の解散に至った。
HDZは7月選出のプレンコビッチ新党首が穏健路線で右傾化を修正し、イメージ回復に成功したことが選挙結果にプラスとなったもようだ。一方、SDPはミラノヴィッチ党首が選挙戦でセルビアやボスニア・ヘルツェゴビナを攻撃するナショナリズム発言を繰り返したことから有権者離れを引き起こした。
クロアチアは観光業を除くと数年来の不景気に苦しんでおり、2013年の欧州連合(EU)加盟後も改善がみられていない。若年失業率は43%にも上る。
ドイツのIfo研究所が先ごろ発表した調査によると、◇製品の価格が高く国際競争力に欠ける◇官僚主義で輸出が難しい◇劣悪な事業環境のためクロアチア人も国外で起業――といった点が経済にブレーキをかけている。有能な若者の国外流出も拡大し、さらなる問題となっている。