米格付け大手のスタンダード&プアーズ(S&P)は16日、ハンガリーの長期信用格付けをフォリント建ておよび外国通貨建てともに従来の「BBBマイナス」から「BBプラス」へ一段階引き上げた。これにより、ハンガリーは2011年末以来の「投資適格級」に復帰する。短期債務も自国通貨・外貨建てともに「B」から「A」に引き上げられた。見通しは「安定的」とした。
S&Pは他の大手格付け会社に比べて、経済政策の予見しやすさや事業環境といった数値化の難しい要因(ソフトファクター)を重視する傾向にあり、今回の格上げに市場は好反応。週明け19日のハンガリー株価指数は一時、9年来で最高を示した。また10年物国債利回りも12ポイント減の2.84%まで下がった。
S&Pは個人消費の拡大などで、ハンガリー経済が2019年まで年平均2.5%成長すると予測。国家債務の国内総生産(GDP)比も15年の75%から19年には70%へ縮小するとみている。今年の財政赤字はGDP比1.8%へ低下し、欧州連合(EU)の上限3%を優に下回りそうだ。
S&P、フィッチ・レーティングス、ムーディーズ・インベスターズ・サービスの三大格付け会社は、2010年に就任したオルバン首相の「非正統的」な経済政策運営などを理由に、数度にわたりハンガリー国債の格下げを行った。その後、経常収支の安定、国家債務削減や金融部門の改善を受けて段階的に格上げを実施。フィッチは5月の段階で「投資適格級」に引き上げており、3社のうち「投機的」としているのはムーディーズのみとなっている。同社は11月4日の見直しを予告している。(東欧経済ニュース2016年5月21日号「フィッチ、ハンガリーを投資適格級に引き上げ」を参照)