モンテネグロで16日行われた議会選挙(定数81)は親欧米の与党・社会主義者民主党(DPS)が41%を得票して勝利した。北大西洋条約機構(NATO)及び欧州連合(EU)への加盟を目指すジュカノヴィッチ首相の政策が国民の同意を得た形だ。ただ、議席数は36と過半数に届かず、組閣にはこれまでどおり少数民族政党議員の協力が必要となる。
NATO加盟に強く反対する親ロ政党・民主戦線(DF)は得票率20%で18議席、親欧州の野党連合クリュチ(「鍵」の意)は11%で9議席を獲得したもようだ。投票率は約73%で2012年の前回選挙を上回った。
ジュカノヴィッチ首相は選挙戦で、「欧州への統合を進めて明るい将来と平和を築くか、ロシアの『植民地』になるか」を決める「歴史的選挙」と訴えた。ただ、野党には親欧派も含まれており、政治的対立の図式はそれほど単純ではない。ロシア、中国、イタリアからの投資が経済成長を支えている事実から、「『NATO対ロシア』の構図は現実に即さない人工的なもの」と批判する声も強い。
人口62万5,000人の小国であるモンテネグロは過去25年にわたりジュカノヴィッチ首相が治めてきた。ただ、実情は汚職がはびこる同族支配の「ジュカノヴィッチ侯国」と揶揄(やゆ)され、近代国家のあるべき姿とはかけはなれている。首相にはイタリアでも収賄の容疑がかかっているが、不逮捕特権で訴追を免れている状況だ。
若年失業率は40%前後、経済の見通しを暗いとみる人は69%にも上る。それでも与党が支持を失わないのは、国民の多くが公務員・国営企業従業員で、野党に投票すれば立場が悪くなるという背景がある。
また、野党の立候補届出数が17会派に上った事実が示すように、反与党の足並みがそろっていないことにも原因がある。