ドイツ自動車メーカー、中東欧への進出を加速

ドイツ自動車メーカーが中東欧への進出を加速させている。フォルクスワーゲン(VW)は先月、ポーランドで商用車工場を開所。ダイムラーはハンガリーにおける増産と、ポーランド・エンジン工場設置に取り組んでいる。西欧に近い地の利と安い人件費、質の高い労働力が魅力となっているもようで、BMWを除くと「東」へのシフトが明確だ。

VWは先月24日、ポーランド西部ポズナニ近郊のヴジェシニャで大型トランスポーター「クラフター」工場を開所した。来年は最大7万台、2018年には10万台を生産する計画だ。

VWは新工場の従業員について「勤勉かつ勤労意欲が盛んで能力も高い」と大いに満足している様子だ。欠勤率は1%未満と、独ハノーバー工場の6~7%よりもずっと低い。賃金水準は明らかにしていないが、ドイツの数分の一にしかならないのは確実。しかも、ベルリンから自動車で数時間という近さだ。

VWはすでにグループブランドのMANやスカニアを含め、ポーランドのポズナニ、ポルコヴィツェ、スタラホヴィツェ、クラコフ、スウプスク、グウォグフで拠点を操業している。

乗用車部門ではチェコ子会社のシュコダを筆頭に、VWブラチスラバ工場(スロバキア)、アウディ・ジュール工場(ハンガリー)を運営する。

ダイムラーはハンガリー・ケチュケメートに10億ユーロを投じて第2工場を整備するほか、ポーランド南西部ヴロツワフ近郊のヤヴォルにエンジン工場を設置する計画だ。エンジン工場は2019年に稼働予定。同社はルーマニアでもエンジン・変速機部品を生産している。

その中で、BMWだけは中東欧に生産拠点を持っていない。唯一、ロシア・カリーニングラード州のアフトトルに「3シリーズ」、「5シリーズ」、「Xシリーズ」の生産を委託しているだけだ。

中東欧工場の設置を後押しする大きな理由は労働コストにある。ドイツ自動車工業会(VDA)によると、ワーカーの1時間あたりのコストはドイツの52ユーロ弱に対し、ポーランドとハンガリーで10ユーロ未満。ルーマニアの5.9ユーロを除くと最低水準にあるという。

これに加え、業界専門家は労働者の能力の高さ、現地調達部品の質の高さを指摘する。労働の柔軟性に富み、規制が比較的緩いこともプラスになっているようだ。ただ、ハンガリーやチェコでは次第に従業員の確保が難しくなってきている。

もう一つ理由はロシア市場の大きさだ。景気が回復すれば同国の潜在的な市場規模は最大500万台と推定され、メーカーが視線を東に向ける背景となっている。

上部へスクロール